林芳正外相は22日の閣議で、令和4年版の外交青書を報告した。ロシアによるウクライナ侵攻について「欧州のみならず、アジアを含む国際秩序の根本を揺るがす暴挙」と指弾。北方領土に関して「日本固有の領土であるが、現在ロシアに不法占拠されている」との表現を復活させた。「不法占拠」は平成15年版以来、「日本固有の領土」は同23年版以来となる。対ロシアで前年版までの融和的なトーンを一変させた。
冒頭の情勢認識では「米国が指導力を発揮して国際社会の安定と繁栄を支える時代から、米中競争、国家間競争の時代に本格的に突入した」との分析を初めて示した。
ウクライナ情勢に関して「事態の展開次第では、世界も日本も戦後最大の危機を迎える」と強い危機感を示した。事態が中国の動きに与える影響を念頭に「力による一方的な現状変更を、いかなる地域においても決して許してはならない。日本を含む国際社会の選択と行動が、今後の国際秩序の帰趨(きすう)を決定づける」と強調した。
日露関係については「平和条約交渉の展望を語れる状況にない」とし、前年版までみられた日露協力に関する前向きな記述がなくなった。
中国の軍事活動の活発化に関して「日本を含む地域と国際社会の安全保障上の強い懸念材料になっている」と指摘。一方で日中関係を「日本にとって最も重要な二国間関係の一つ」と前年版同様に規定し、「建設的かつ安定的な」関係の構築を目指すとした。
韓国についても「重要な隣国」との表現を踏襲しつつ、いわゆる徴用工をめぐる問題などを挙げて「今後とも韓国側に適切な対応を強く求めていく」とした。北朝鮮に関し、拉致問題の解決を目指す方針を改めて記した。