ロシアからの侵攻が続くウクライナ。日本から記者と同行で入った首都キーウ(キエフ)からの2回目のレポートは、一見、平穏にも映る市内の様子と、やはりここは戦地なのだと痛感させられた体験を伝えたい。
(写真報道局 桐原正道)
「4割は戻った」
中心街のホテルにチェックインすると、朝食ビュッフェ付きのプランを案内された。食料調達で現地の人たちに迷惑を掛けてはいけないと、レトルト食品などを大量に持参したのは杞憂に終わったようだ。
翌日の朝食のメニューはサラダやソーセージ、スクランブルエッグ、クロワッサン、ヨーグルトなど一般的なホテルの朝食と変わらない。いつも国内出張で利用するホテルより豪華なメニューに苦笑した。
わずかな時間しか過ごしていないが、市内は平穏を取り戻しつつあるように感じる。中心街の大通りは人通りこそ少ないものの、飲食店も徐々に再開し、地下鉄や路面電車、バスなども運行している。
国際的な配車アプリ「Uber」も利用可能。スマートフォンで車を呼べば2~3分で到着する。Uberの運転手の男性は「避難していた人たちも4割くらいは帰ってきたのでは」と教えてくれた。
ホテルに隣接するスーパーには色とりどりのフルーツや野菜、肉、魚などが大量に並んでおり、現地の人たちも普段通りの生活を送っているように見えた。
厳重なままの警備
だが、ロシア軍の再侵攻に備え、警備は厳重なままだ。市庁舎や病院、鉄道駅などは武装した兵士が周辺を警備、基本的に撮影や取材は許されない。
幹線道路ではいたる所に土嚢などでバリケードが築かれ、片側4車線の道路を1車線に絞っている場所もあった。街の入り口などにある即席の検問所では、車を1台1台止めて乗車している全員のパスポートチェックが行われていた。
同行の記者が…
そんななか、キーウの観光名所にもなっている独立広場で、警備していた兵士の許可を得て撮影をしていると、同行していた記者が数人の兵士に取り囲まれてしまった。どうやら「撮ってはいけない土嚢」を撮ってしまったらしい。言葉が分からない自分が行っても何の助けにもならないだろうと戸惑っていると、記者はそのまま車で連行されてしまった。
記者は約3時間にわたって話を聞かれ、ようやく放免されたが、重く国を覆うロシアの影に、兵士たちがピリピリしていることは間違いないようだ。
国防省が発行した取材許可証を持っていても、街中でカメラを構えていると兵士や武装した警備員に制止されることが多い。毎回、チャレンジの連続だが、少しでも多く現地の様子を伝えていきたい。