from和歌山

田辺市では桜より梅

和歌山県田辺市中心部の桜。群生してないため、あまり目立たない=4月6日
和歌山県田辺市中心部の桜。群生してないため、あまり目立たない=4月6日

和歌山県田辺市を担当して2年余り。4月を迎えると、ちょっとした違和感を覚えることがある。

桜の季節。群生した桜の木が数多くの花を咲かせる光景を期待するのだが、郊外を除く市中心部にそんなところを探すのは難しい。車で回っていても1、2本の桜が咲いているのは見かけるものの、群生というほどの数ではない。

日本有数の梅産地であり、2~3月、美しい梅の花をあちこちで満喫できるのとは対照的で、桜はあまり目立たない。

記者として関西各地などで働いたが、ほかの地域では中心部にもう少し桜が多かったように思う。

市のベテラン職員は「まち中に大きな公園がほとんどなく、郊外以外、桜が群生できるところがない」と打ち明ける。

職員によると、かつて市内を流れる会津川の堤防に桜を植えようという動きがあったが、堤防の強度が落ちるとして立ち消えになったいう話を聞いたことがあるという。

確かに、会津川を管理している県西牟婁振興局に取材すると、「堤防に桜などの樹木を植えると、根が張ることで強度が低くなり、決壊しやすくなる恐れがある」という答えが返ってきた。国土交通省大和川河川事務所(大阪府柏原市)でも「防災上、堤防には桜などの樹木はないほうが望ましい」と指摘する。

しかし、各地の堤防に桜は植えられている。かつて勤務した奈良市では佐保川の桜が一番有名だ。奈良市や奈良県大和郡山市を流れる川で、桜並木が約5キロにわたり続き、江戸時代末期に植えられたという説がある。住民に愛されており、奈良県河川整備課では「地元住民が古木の補強をしている」と説明する。

田辺市では桜は目立たないが、梅は群生しており、花々は華麗だ。見て楽しむだけでなく、地元の重要な産業でもある。市内で生まれ育ったベテラン職員は「田辺では梅が咲きだしたら春。桜にはこだわりがない」と語る。春のめで方にも地方色があるのだろう。(張英壽)

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