鑑賞眼

宇崎竜童「風のオマージュ」 直前に手術、不屈の闘志で開演

コンサート「風のオマージュ」を開いた宇崎竜童=東京都千代田区(提供写真)
コンサート「風のオマージュ」を開いた宇崎竜童=東京都千代田区(提供写真)

宇崎竜童が不屈の闘志で、「風のオマージュ」と名付けたコンサートをやり遂げた。

このコンサートは、2部構成で、1部は松田優作、根津甚八ら亡くなった友人らのため宇崎がこれまでに書いたレクイエム(鎮魂歌)、あるいは生前の彼らに提供した歌を集め、故人をしのぼうという企画。

実は宇崎、先月22日に緊急入院していた。第2部の冒頭、ステージで本人が明らかにした。腹痛でクリニックを訪ねた。すると「腸に穴が開いている」という。大きな病院に駆け込み、すぐに手術を受けた。「小腸を40センチ切った」という。

退院したが、歌える状態ではなかった。周囲は公演中止も検討した。

だが、この公演は昨年、コロナ禍で一度中止にしていた。宇崎は、なんとしてもやりたい。

1週間、静養。それから、リハーサルで体調を確認。「中止にしなくていい」と確信できたのは、開催の2日前だったという。

「今の俺の心境です」と歌ったのが、「生きてるうちが花なんだぜ」。とんねるずの木梨憲武のソロアルバムに提供した歌だ。

妻で作詞家の阿木(あき)燿子ではなく、宇崎本人が歌詞を書いた。歌というより語りに近い。代表曲「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」は、語りというにはだいぶ芝居がかってはいる。だが、それでも宇崎の音楽の本質は「トーキング・ブルース」にあるのかもしれない。

「ストップ・ザ・ウオー。ウクライナに平和が戻りますように」。祈りの言葉から始めたのは「RIVER・2022」。

阿木が書いた歌詞は、明らかにロシアのウクライナ侵攻に対する抗議。

困難な時代にかんがみ、「決して負けない」という趣旨の新曲を用意したいと話していた。だが、阿木はより直接的な言葉を紡いだようだ。

ウクライナの関連ではもう1曲、「ジグソーパズル」という歌も披露した。これも木梨に提供した歌。「木梨は、勝手にテンンポもアレンジも変えて録音した。僕なりに歌いたい」と、バラードで聴かせた。

阿木が書いた歌詞は、ヒマワリのジグソーパズルに人生を重ねる。そして、ヒマワリはウクライナの国花だ。

また、ウクライナへの支援金を集めるため、公演会場では特製のギターピックを販売するなどした。

友人への思いを風に乗せるように届けたいと企画し、阿木がプロデュースしたコンサートは、ウクライナ侵攻から宇崎の健康状態まで、過去と現在をつなぐような内容になった。

「200X」という歌はタイトルを「20XX」に変え、歌詞も改めた。宇崎は「2022年の現在、今を生き、歌っている」と高らかに歌い上げた。

阿木と宇崎が作る歌が色あせることなく、いつの時代にも呼応できることを証明した。

終演後、宇崎は「今日は、なんとか体がもったね。元気になったときにパート2をやりたい」と宣言した。

7日、東京国際フォーラム・ホールCで。2時間20分。(石井健)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

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