令和4年度補正予算案をめぐっては、自民党と公明党の間で駆け引きが続いていたが、今国会中に成立させる方針で21日に両党が合意し、公明の主張が通る形で決着した。政府・自民は最後まで消極的だったのに対し、公明は支持母体の創価学会の意向を踏まえて補正予算案の早期成立にこだわり、連立を組む自民に「政治の責任」だと主張して押し切った。
「最初は補正予算案の編成はまったくだめ、というところからだったから」
公明幹部は21日、公明の主張に沿う形で妥結したことに安堵(あんど)の表情を浮かべた。
公明はウクライナ危機などを踏まえ、3月下旬から「(参院選実施に伴う)政治空白の期間中に歳出ニーズが大きく膨らんだ際に財源が足りなくなり、政権の責任につながる」(山口那津男代表)として、今国会中の補正予算案の編成・成立を主張してきた。
ただ、会期末間際に衆参の予算委員会を開けば、野党側の追及で政権の支持率が下落し、参院選で与党にマイナスに作用する可能性がある。そのため、自民は今国会中の補正予算には反対していた。茂木敏充幹事長が会長を務める茂木派(平成研究会)の所属議員によれば、21日の派閥会合でも、参院議員の一人が「今まで補正を選挙前にやって勝ったためしがない。非常に心配だ」と懸念を表明したのに対し、茂木氏が「相当厳しい交渉をやっている。相手のあることだ」と理解を求める一幕があったという。
にもかかわらず、公明執行部は補正の早期成立を求めた。公明側のかたくなな対応を見た政府・自民側には「山口氏は話が分からない人ではない。それなのに、強硬に主張するのは創価学会が首を縦に振らないからだ」(閣僚経験者)との見方が広がった。
公明側からすれば、ウクライナ侵攻に伴う物価高が今後も続けば、参院選を前に支持者から手厚い支援を求められる可能性がある。家計の負担軽減が柱となる補正の早期成立という実績を前面に、参院選では比例代表で800万票の獲得を目指したい考えだ。
自民の譲歩を引き出した公明の石井啓一幹事長は21日、参院選前の衆参予算委員会の開催リスクについて、記者団にこう語った。
「今の岸田内閣であれば、しっかりと答弁されてますから、国会の終盤に予算委員会をやったからといって、野党に優位に働くことは必ずしもない」
(児玉佳子、原川貴郎)