自社の存在意義を見つめ直し、社会に対してどんな価値を提供していくかを示す「パーパス」を軸にした経営が注目されている。「パーパス経営」と呼ばれ、新型コロナウイルス禍で人々の価値観がガラリと変わり、短期的な利益を追求する株主資本主義を脱却して、資本主義の新たな形を模索する潮流の中で火がついた。日本企業には実はなじみやすい考え方だが、海外に比べその取り組みは遅れている。
■株主資本主義から脱却
英語のパーパス(purpose)は一般的に「目的」の意味を示すが、ビジネスの世界では「存在意義」と訳されることが多い。日本でパーパス経営の言葉を広めたとされる、一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻の名和高司客員教授は、パーパスを「志」と表現する。
自社の存在意義を見つめ直し、社会に何らかの価値をもたらしたいという内面からわき立つような欲求を指す。多くの企業が掲げてきた「ミッション(使命)」や「ビジョン(理念)」とは異なり、従業員や顧客、投資家に共感の輪が広がっていくというのが理想的な形だ。