マイナンバー関連法は、「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性」の3つの目標を軸として平成25年に成立した。28年1月からはマイナンバーカードの交付が開始され、既に6年が経過した。令和4年2月時点の交付率をみると、1位の宮崎県(54・6%)は半数を超えたが、全国平均は41・8%にとどまっている。「5年3月末にはほとんどの国民がカードを保有する」とする政府目標にはまだ遠そうだ。
千葉県は第9位で全国平均を若干上回るものの、42・7%となっている。また、市町村ごとの交付率をみると、浦安市が唯一過半数となる51・8%、次いで習志野市(47・8%)、千葉市(46・5%)となっており、10位以内は都市部やニュータウンを有する地域で占められている。浦安市では、専用のタブレット端末を利用したマイナンバーカードの申請補助サービスを行っている。申請者が市役所を訪問し、その際に職員がインターネット申請を補助するサービスだ。また、受付窓口を9カ所も設けるなど待ち時間も短縮させており、裾野を広げる活動が結果につながっている。
全国1位の宮崎県は県・市町村がさまざまな取り組みを展開している。例えば、市町村で交付率全国1位である都城市(76・1%)では、浦安市と同様のタブレット端末サービス等に加え、マイナンバーカードの申請補助のため、市役所職員が直接自宅に車で訪問する「マイナちゃんカー」を走らせている。同サービスは、当初は地域などで5人以上集まった場合に受け付けていたが、昨年から1人でも申請できるように改定され、来庁の難しい一人暮らしの高齢者などにも対応している。このように「誰一人取り残さないデジタル化」を進めるためには、時にアナログな手法を用いることも効果的である。
昨年には「デジタル田園都市国家構想」が掲げられるなど、行政サービスのデジタル化機運は高まっているが、デジタル化は手段であり目的ではない。本来の目的は、行政の効率化や住民サービスの向上にある。マイナンバーカードの交付率もひとつの指標ではあるが、あくまでデジタル化の入り口に過ぎない。証明書のコンビニ取得や身分証明、オンライン申請などさまざまなメリットはあり、今後も機能拡充は予定されているものの、さらに普及・促進していくには、マイナンバーカードを取得・活用することで、具体的にどう便利に、どう過ごしやすくなるのかターゲットに応じて発信することが求められる。(ちばぎん総研主任研究員 五木田広輝)