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「住民は機関銃で殺された」激戦の街イルピン・ルポ 地下室で耐えた1カ月

20日、ウクライナ首都キーウ郊外のイルピンで、ロシア軍の攻撃で破壊されたショッピングセンター(桐原正道撮影)
20日、ウクライナ首都キーウ郊外のイルピンで、ロシア軍の攻撃で破壊されたショッピングセンター(桐原正道撮影)

ロシアのウクライナ侵攻で首都キーウ(キエフ)攻防の前線となった郊外のイルピン市(人口約6万人)を訪れた。集合住宅にはロシア軍が撃ち込んだ砲弾の痕が生々しく残り、住民は「機関銃で民間人が射殺された」と証言した。3月の約1カ月間に及んだ激戦でウクライナ軍が露軍を退却させていなければ、首都は包囲され、猛攻を受けていたとみられている。

キーウでの避難生活を終え、イルピンに戻る住民女性、クラブディアさん(37)に同行した。イルピンまで車で約1時間。イルピン市境にかかる橋の一つは、露軍のキーウ進軍を阻む目的でウクライナ軍に爆破されていた。イルピンに入ると、クラブディアさんは「これが私の街なのか…」と言葉を詰まらせた。

20日、ウクライナ首都キーウ郊外のイルピンで、住民に多数の死者が出たことに涙を流すオクサーナさん(桐原正道撮影)
20日、ウクライナ首都キーウ郊外のイルピンで、住民に多数の死者が出たことに涙を流すオクサーナさん(桐原正道撮影)

砲弾の衝撃で物が散乱した高層アパートの自宅で、彼女は「(窓から)向こうに見えるブチャ市に戦車部隊が陣取り、攻撃してきた」と語った。3月9日、彼女は5人の子供を連れて徒歩でイルピンを脱出。道中で避難を助けるボランティアの車に拾われ、キーウに逃れたという。

周辺のアパートには砲撃で大きな穴が開き、多数の戸建て住宅が完全にがれきと化していた。大型ショッピングセンターの壁面は吹き飛ばされ、屋根と柱だけの姿になっていた。

「駅につながるこの幹線道路を露軍の車列が進んできた。われわれは対戦車砲などで迎え撃った」。ショッピングセンター付近にいたウクライナ軍人は激戦を振り返った。

砲撃で焼け焦げたアパートの前で住民男性のエブゲーニーさん(43)と出会った。3月初旬から1カ月近く、住民20人で共用倉庫の地下室に潜んでいたという。6畳にも満たない真っ暗な地下室には簡易ベッドが3つ置かれていた。

「心臓の悪い老人がいたため、私はここに残った。20人でほぼ飲まず食わず、交代で睡眠をとった」。エブゲーニーさんは「アパート住民の一人は共用玄関で露軍に機関銃で殺された」とも語った。見せてもらったアパート室内はがれきが散乱するだけとなっていた。

当局によると、市内では約270人の民間人の遺体が確認された。住民女性のオクサーナさん(42)は「プーチン(露大統領)はウクライナ人を殲滅(せんめつ)しようとしている」と憤り、「殺された人々をせめてきちんと埋葬してあげたい。行方不明の人も多数いる」と涙ながらに語った。(イルピン 遠藤良介)

 


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