男性の育休 法改正で拡大なるか 4月施行

男性の育児休業(育休)の取得促進を目指す「改正育児・介護休業法」が今月施行された。改正法では事業所に対し、育休取得の意向を男性社員にも確認することを義務化。心理面から取得に二の足を踏む状況の打開が期待され、子育て世代からは歓迎の声もあがる。一方で、育休取得者の増加に伴う人手不足が課題となりそうだ。

厚生労働省によると、令和2年度の男性育休取得率は12・65%。10年前から約9倍に増加したが、8割を超える女性と比べ低い水準で、国は3年後に30%まで引き上げることを目指す。

「1歳の長女の慣らし保育のため、1カ月仕事を休ませてほしい」

2児の父親で埼玉県に住む会社員の辻下寛人さん(39)は5年前、当時勤めていたITベンチャー企業の上司にこう切り出した。「難色を示されたら会社を辞めよう」。そう心に決めて勇気を振り絞った。

営業の仕事は楽しかったが、終電で帰宅する毎日。育児は育休中の妻に任せきりだった。このまま小学校教諭の妻が職場復帰し、長女が保育園に入れば送迎などでさらに負担を強いることになる。育休から職場復帰したばかりの女性が、自ら命を絶ったという話も耳にしたばかりだった。

幸い上司や同僚は休むことを快諾してくれた。辻下さんのケースを皮切りに、男性も育休を言い出しやすい社内の雰囲気ができた。

4月に施行された改正法は、従業員が配偶者の妊娠・出産を申し出た場合、事業所は育休や給付金などの内容を伝え、さらに育休を取得するかどうかの意向確認も義務づけた。違反した上で指導に従わなければ、企業名が公表される。

辻下さんは、「会社から明確に反対されなくても社員側が空気を読み、言い出せないケースは多い。会社側からの意向確認は一見地味な改正だが大きな前進になる」と評価する。

企業には男性の育休取得の増加に伴う懸念もある。

東京都などが都内の企業2500社を対象に行った令和3年のアンケートでは、男性の育休取得について、65%が「代替要員の確保」を課題に挙げた。

一方、男性の意識は変わりつつある。新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)に伴って在宅勤務が増え、内閣府の調査では、男性の3割以上がコロナ禍で家事・育児の時間が増えていた。

ただ、こうした傾向にも落とし穴は潜む。父親の子育て支援を行うNPO法人「ファザーリング・ジャパン」の安藤哲也代表理事は「男性が周囲の期待に応えようと育休をとらないまま仕事も子育ても全力で行い、結果としてパンクする相談が最近増えている」と話す。

安藤さんは、代替要員の確保も含め、職場は子育て世代の男性が育休で抜けることを想定して人員を配置すべきといい、「男性だけ代替要員がいないというのは、共働き家庭が増えた現代の働き方に逆行する。環境を整えれば優秀な若い人材も集まりやすくなり、企業側にもメリットはある」と指摘した。(桑波田仰太)

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