20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は共同声明をまとめられずに閉幕した。みずほリサーチ&テクノロジーズの中尾武彦理事長(元財務官)に、機能不全が指摘されるG20について聞いた。
--G20が協調できない状況が続いている
「格差拡大や米国と中国の対立が表面化して〝自国第一主義〟が広がる中で、新型コロナウイルス禍とウクライナ問題が起きた。新興国の主張も各国で異なり、対応にも溝が広がっている。共同声明のような(全会一致が原則の)成果を出すのは難しい状況で、G20の存在意義が低下しているのは確かだ」
--G20を存続させる意義はあるのか
「財務相や中央銀行総裁といった各国の経済専門家が、意見を交換することは意義がある。むしろ、こうした状況下でも対話を続けなければ、国際協調体制はさらに分断しかねない。今後はエネルギーや食料品価格の高騰、気候変動対策、途上国の債務問題への対応について、G20で議論を進めなければならない。議論の正常化には、戦争を早期に終結させ、国際的な協調姿勢を取り戻すことが大前提だ」
--G20の組織改編など体制の見直しは必要か
「G20の議論の正常化は、議題の決め方や組織の枠組み変更で解決できる問題ではない。ある特定の国をG20から排除すれば、さまざまな国との関係遮断が助長される懸念もある。各国が長期的な国民利益を図るならば、排除的な考えではなく協調姿勢が重要だ」