異例の参院選前補正 首相、公明党に配慮も政権にリスク

出邸する岸田文雄首相=21日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)
出邸する岸田文雄首相=21日午前、首相官邸(矢島康弘撮影)

岸田文雄首相(自民党総裁)が令和4年度補正予算案の今国会成立を目指す方針を固めたのは、連立政権を組む公明党に配慮したためだ。政府・自民内には慎重論が強かったが、参院選を前に〝隙間〟が指摘される両党の結束を優先した。ただ、「選挙前の補正」を行った過去の政権は退陣に追い込まれており、政権にはリスクとなる。

「理屈ではない。両党の関係だから政治的判断が必要だ」。今月上旬、首相は政権幹部に漏らしていた。

首相は物価高騰を受けた緊急対策について、まずは予備費で迅速に対応し、参院選後に看板政策の「新しい資本主義」に向けた事業なども盛り込んだ補正予算案の編成を視野に入れていた。財務省をはじめ政府や、首相周辺も今国会での補正編成に否定的で、首相自身も慎重だった。

国政選挙前に補正予算を成立させると、選挙対策との批判が高まり選挙戦がむしろ厳しくなるとの「ジンクス」がある。宮沢喜一政権は平成5年衆院選で過半数割れし、麻生太郎政権も21年衆院選で大敗、政権交代を余儀なくされた。

今国会で補正予算案を審議する場合、選挙前の6月上旬に衆参予算委員会の開催が想定され、野党に政権追及の機会を与えることになる。予算の規模や使途などをめぐり、批判が強まりかねない。新型コロナウイルスの感染の落ち着きなどもあり、岸田内閣の支持率は堅調だが、自民中堅は「今のところ政権のスキャンダルは出ていないが、野党の攻撃で支持率が下がるリスクはある」と語る。

一方で、自民と公明は参院選の相互推薦をめぐって関係が悪化し、3月には首相自ら修復に乗り出す事態になった。自民にも選挙基盤の弱い若手を中心に、支持母体が創価学会で集票力を持つ公明との協力を重視する声は根強い。

政権としても、参院選後には公明が慎重な「敵基地攻撃能力」の保有を含め、国家安全保障戦略の改定などが控える。悲願の憲法改正にも公明の協力は欠かせない。自民は国民民主党や支持組織の連合への接近を強めているが、首相は連立政権を組んで23年目になった公明との関係を改めて重視した形だ。(田村龍彦)

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