ウクライナからの避難民20人を乗せた日本の政府専用機が5日、ポーランドから羽田空港に到着した。
昨年8月のカブール陥落に際し、日本は自衛隊機3機を飛ばしながら、邦人1人と米国から要請を受けたアフガニスタン人14人の計15人しか輸送せず、退避を希望するアフガン人協力者500人以上が置き去りになった。
その汚名をそそぐべく、今回は政府専用機を柔軟に運用し、人道的な措置をとったかに見えた。だが、その後の一部報道によれば、余席は十分すぎるほどあったはずなのに、搭乗を「不可」とされたウクライナ人や、「日本国籍所持」を理由に搭乗を拒否された日本人がいたという。
これは、二重の意味で理解に苦しむ。一つは、そもそも邦人の輸送こそ優先させるべきだということ。仮に、自力で帰国した日本人との公平性を考慮したのだとしたら、後日代金を支払ってもらうという柔軟な対応も考えられたのではないか。もう一つは、「ウクライナ人用」と言いながら、ウクライナ人を夫に持つ日本人とその娘達を受け入れなかった、つまりウクライナ人家族を拒否したこと。あまりのお役所仕事ぶりに、恥の上塗りをした感が否めない。
そんな中、自衛隊の現地派遣要件を見直す改正自衛隊法が13日、参院本会議で成立した。アフガン派遣では「安全確保条件を満たすか否か」の判断に時間を費やし先進7カ国(G7)各国に1週間ほど後れをとった。これを教訓に同条件を削除、危険回避のため「方策を講ずることができると認めるとき」に改めるという。
自衛隊機を送るのは民間機では危険な状況下だからだ。安全の基準は、民間機とは異なる。原則として政府専用機を使う規定も廃止、救出する邦人がおらず外国人のみの場合も輸送を可能にするなど、遅まきながら柔軟な運用に見直されたことを評価したい。有事の自国民保護はもちろん、可能な範囲で他国民救出を行うことは、将来の自国民救出にも寄与するからだ。
そもそも日本には、自衛隊を日本の安全保障・国益に寄与させる主体的な戦略がないのではないか。過去の歴史に学び、戦略的運用を行うべきであろう。
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【プロフィル】葛城奈海
かつらぎ・なみ やおよろずの森代表、防人と歩む会会長、ジャーナリスト、俳優。昭和45年、東京都出身。東京大農学部卒。自然環境問題・安全保障問題に取り組む。予備役ブルーリボンの会幹事長。近著に『戦うことは「悪」ですか』(扶桑社)。