写真紀行・瀬戸内家族

一本桜、見事な佇まいに感じた風格

ちょうど昨年の春のこと、瀬戸内の桜をバックに家族写真を撮ることにした。そこで因島を中心にロケハンを重ねる中で、目に留まった桜が今週の写真になる。因島水軍スカイラインのほぼ中央、椋浦休憩所のすぐ脇に咲いた桜だ。海を見下ろす断崖絶壁の上にぽつんと、それでも力強く咲く姿が素晴らしかった。こうした海に映える一本桜と出会うのは、案外難しいものだ。

中四国地方の一本桜といえば、島根県浜田市にある「三隅大平桜」、そして岡山県真庭市の「醍醐桜」などが有名だろう。「三隅大平桜」が樹齢約660年、「醍醐桜」は約1000年に及ぶ大木だ。さすがにそれにはかなわないけれど、名付けてこの「水軍桜」もご覧の通りなかなかの風格ではないだろうか。家族と一緒に後日足を運んだところ、その見事な佇(たたず)まいにみんな大きく目を見張ったものだった。

一本桜であること、海景が望まれること、そして人知れず健気(けなげ)に咲いていること。前々回記した向島の桜もそうだったように、ぼくが見染める桜にはそんな特徴があるらしい。そうした桜をご存知の方は、ぜひご教示いただけるとありがたい。いつか必ず足を運んで、またご紹介できれば幸いだ。

小池英文(こいけ・ひでふみ)写真家。東京生まれ。米国高校卒後、インドや瀬戸内等の作品を発表。広島・因島を中心に撮影した写真集「瀬戸内家族」(冬青社)を出版。ウェブサイト「http://www.koike.asia/」

会員限定記事会員サービス詳細