ビブリオエッセー

異能力バトルの次は名作に 「文豪ストレイドッグス」原作・朝霧カフカ 漫画・春河35(さんご)(角川コミックス・エース)

「人間万事塞翁が馬」ということわざがある。人生は良いことも悪いこともあるという意味だが、これをもじった「人生万事塞翁が虎」という章から始まるこの漫画は、孤児院を追い出された青年、中島敦が空腹で行くあてもなく横浜へやってくる場面から始まる。

あの文豪と同じ名をもつこの青年が出会ったのが太宰治と国木田独歩だった。こちらも文豪と同じ名をもつ二人だが「武装探偵社」という事務所で働いている。普通の探偵事務所ではない。異能力集団なのだ。ほかにも与謝野晶子や江戸川乱歩らがいて、「文豪」たちはみんな特殊な力を持っている。たとえば太宰は「人間失格」、国木田は「独歩吟客(どっぽぎんかく)」という名の異能力を。中島には猛虎に変身する力「月下獣」があり、さっそく入社を勧められる。

横浜の裏社会には同じく異能力集団のポートマフィアがいた。探偵社は、同じように文豪の名をもつ芥川龍之介や森鴎外、「檸檬爆弾(レモネード)」の梶井基次郎らと闘いを繰り広げる。「文豪」たちの異能力バトルアクションである。

みんなが闘う姿ももちろん熱くカッコいいのだが「文豪」たちの名言が心に響く。たとえば中島の「昔、私は、自分のした事に就いて後悔したことはなかった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた」とか「頭は間違うことがあっても、血は間違わない」など諦める気になれなくなる名言があるのだ。逃げ出したくなった時はこの言葉を思い出す。

キャラも個性的で面白い。自殺マニアや仕事人間、言動が幼い名探偵やシスコンの同僚など少々カオスな気もするが和気あいあい。

読後は文豪たちの作品を読んでみたいと思うはず。私もさっそく乱歩の『人間椅子』を読んだ。漫画と文豪の名作で感動も倍増しそうだ。

大阪府河内長野市 大坂果穂(15)

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