琥珀(こはく)院 四
「江良(えら)殿、毛利の虚報なのですな? 何ゆえ――」
――濡れ衣と言ってくれなかった!
隆兼(たかかね)は房栄(ふさひで)の傍にひざまずく。夥(おびただ)しい血を流した房栄から、苦し気な声が苔(こけ)庭にこぼれる。
「なるほどわしは潔白じゃが……お主らゆめゆめそれを口外するなよ。陶(すえ)殿は無実の者を斬るという噂が広まれば味方は動揺する。今さらわしが無実と申しても……陶殿の面目を潰す。毛利に寝返る者も出て、味方の負けにつながろう。されば江良房栄(ふさひで)、濡れ衣をまとったまま冥途(めいど)に参る」