ウクライナ侵攻で新興国経済に混乱拡大 食糧危機も

ウクライナ危機に伴い新興国や途上国で経済の混乱が拡大している。ロシアはエネルギー大国、ウクライナは世界有数の穀倉地帯とあって、両国からの輸出減は国際価格の高騰を招き、食糧危機や政情不安につながった形だ。20日に米首都ワシントンで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の足並みが乱れ、国際社会の対処が遅れれば、世界経済の先行きに悪影響を及ぼしかねない。

世界貿易機関(WTO)のオコンジョイウェアラ事務局長は「ウクライナとロシアが世界に供給してきた食糧や肥料などの急騰で、潜在的な食糧危機が迫っている」と指摘。特に低所得国の経済に警戒感を示す。

ロイター通信によると、経済危機が続くスリランカでは19日、物価高や資源価格の高騰に伴う停電などに抗議するデモ隊に警官が発砲し、1人が死亡、十数人の負傷者が出たもようだ。

パキスタンでは10日、物価高への対応に国民の不満が爆発し、カーン首相が不信任決議案の可決で失職する政変に発展。エジプトやレバノンといった小麦の輸入の大半をロシアやウクライナに頼る中東諸国ではパンの価格が高騰している。

新型コロナウイルス禍からの経済回復とウクライナ危機に伴う原油価格の高騰を背景に、モノの価格が世界的に上昇している。米欧はインフレ退治で政策金利の引き上げを急ぐが、高利回りが見込め運用に有利な先進国通貨を買う動きが進んで新興国や途上国から資金が流出し、通貨安や一層のインフレにつながった。

新興国側も物価高に抵抗しており、アルゼンチンは13日、今年4度目の利上げで政策金利を47%まで引き上げた。だが、今年に入ってからの物価上昇率が前年同月比50%超の水準で推移するなど、焼け石に水だ。

大和総研の増川智咲エコノミストは「新興国や途上国は先進国に比べコロナ禍からの景気回復が遅れており、物価の制御が難しければ危機に飲み込まれる」と懸念を示す。新興国は自国経済への〝返り血〟を恐れ対露制裁に慎重だが、足並みの乱れを露呈したG20が対処を怠れば、世界経済の混乱に拍車をかけかねない。(永田岳彦)

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