鑑賞眼

音楽の力が伝えた生きるすばらしさ 「銀河鉄道999 THE MUSICAL」

鉄郎(中川晃教、左)とメーテル(花總まり)は銀河鉄道999号に乗って旅に出る(源賀津己撮影)
鉄郎(中川晃教、左)とメーテル(花總まり)は銀河鉄道999号に乗って旅に出る(源賀津己撮影)

日本漫画史に燦然(さんぜん)と輝く松本零士の名作「銀河鉄道999」がミュージカルになった。平成30年と翌年に上演された舞台「銀河鉄道999」で主人公の星野鉄郎役を演じた中川晃教が、みたび鉄郎に。歌に定評ある中川が演じることで、「音楽の力」が作品のメッセージ性を強く伝える仕上がりとなった。音楽監督は、ゴダイゴのミッキー吉野。演出は小山ゆうなが務めた。

脚本は、昭和54年公開の劇場版アニメを元に、高橋亜子が再構成。永遠の命が欲しい少年、鉄郎は、謎の女性、メーテル(花總まり)とともに銀河鉄道999号に乗り込み、さまざまな星をめぐりながら、限りある命のすばらしさに気づいていく。

漫画やアニメでは表現できる独自性の強い外見を持つ登場人物たちを、生身の俳優がどう演じるのか。それこそが舞台の醍醐味(だいごみ)だが、誰一人として違和感ない仕上がり。大山トチロー(藤岡正明)も機械伯爵(佐藤流司)もクレア(梅田彩佳)も、きっとこんな姿だったのだろうと思えるから不思議だ。宝塚歌劇団出身の北翔海莉演じるクイーン・エメラルダス、三浦涼介演じるキャプテン・ハーロックの立ち姿は、もはや「ずるい」と歯噛みしたくなるレベルだ。

もちろん、ミュージカルならではの歌も負けてない。リューズ(矢沢洋子)の陰のある歌声はすばらしかったし、歌手2人がつむぐ2幕の鉄郎とトチローの歌はいつまでも聞いていたい。

何より急逝した神田沙也加の跡を継ぎ、メーテル役を引き受けた花總の舞台人としての覚悟に拍手を送りたい。りんと立ちながらも寂しさやはかなさを同時に表現する的確な演技で、華麗なる芸歴にまた新たな代表作が加わった。

登場人物も多い壮大な物語を2幕に収めるのは苦労したと思うが、原作を知らない観客を置いていくことなく、丁寧な仕上がりとなった。ただ、個性豊かな星々をめぐっていくストーリーを丁寧に描くとどうしても、場面と場面のつなぎ方が難しくなる。プロメシューム(松本梨香)との対決シーンが最大の盛り上がりだろうが、その存在をもっと早期に分かりやすくにおわすなど、対決シーンに向けて布石を打っても良かったように思う。メーテルの謎と直結する部分だけに、兼ね合いは難しいと思うが。

作品のテーマである「限りある命の美しさ」の理由でもある、「人は思いを受け、思いを届けるために生きる」というメッセージに胸を打たれた。キャスト、スタッフ全員の熱意と祈りは、はるかかなたを走る銀河鉄道に乗る幻のメーテルにも届いただろう。

東京・日本青年館ホールで、9日夜公演を観劇。(道丸摩耶)

公演評「鑑賞眼」は毎週木曜日正午にアップします。

銀河鉄道999 THE MUSICAL(源賀津己撮影)
銀河鉄道999 THE MUSICAL(源賀津己撮影)

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