朝晴れエッセー

風を感じて・4月20日

息子のバイクのうしろに初めて乗せてもらった私。久しぶりに外食することになっていたその日、出かける前になって「バイク、乗ってみる?」と息子に誘われ、少し迷ったあと「うん、乗る!」と返事をした。

目的地まではバイクなら5分程度の距離だった。生まれて初めてヘルメットをかぶり、バイクにまたがり息子のジャンパーの脇を握りしめた。「行くでーっ」という息子の声と同時に、いざ発進! 一瞬体がうしろに引っ張られ宙に浮くような感じになり、私は慌てて息子の腰に手を回した。想像以上のスピード感と風の抵抗にちょっと戸惑ったけれど、それはすぐに何とも言えない爽快感に変わった。

たった5分足らずの時間だったけれど、十数年ぶりかに息子とぴったり密着し、たくましく成長したわが子を身近に感じられたことがうれしかった。思えば幼かった頃はいつも手をつなぎ、膝に乗せ、抱っこして…。いつの間にか私の手を必要としなくなった息子に対して「心」はどんなときもしっかりつないできたつもりだ。

あと何年かしたら、今度は息子が私の手を取り、時にはつえとなってくれる日が来るかもしれない。でもそのときがくるまで私は私らしく風に向かって、風を感じて歩いていきたい。こんな母親を恥ずかしがることもなくバイクに乗せてくれた息子よ、ありがとう。

そして帰り道、「また乗せてね」の言葉を胸に、余裕でバイクにまたがる私がいた。


新名由紀(58) 大阪市旭区

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