社説検証

露軍の民間人虐殺 惨状に各紙が驚きと怒り 産経「プーチン氏排除を」

ウクライナがロシア軍から奪還した首都キーウ(キエフ)近郊で、子供を含む住民の遺体が多数見つかった。ウクライナは戦争犯罪があったとして国際刑事裁判所(ICC)に捜査を要求した。露軍による民間人虐殺の疑いは濃厚で、真相究明と責任追及を求める声が高まった。

4月5日付各紙は、にわかに信じがたいこの悲惨な状況について論じた。

「国際人道法は軍隊が民間人を故意に攻撃したり、殺害したりすることを禁じている。ロシア軍の行為は決して許されない」(産経)、「おぞましい惨劇である。この残酷な侵略戦争の結果を断じて容認できない。国際機関による真相解明を進め、責任者を処罰しなければならない」(朝日)、「胸をえぐられるような衝撃的な映像に、強い怒りを覚える。国連は直ちに現地調査団を派遣し、国際法廷による捜査と連携して、真相の解明を図らねばならない」(読売)―。

ウクライナ当局によると、ブチャという町では遺体は少なくとも410人に上り、後ろ手に縛られたり、地雷を仕掛けられたりしていたものもあった。欧米メディアも確認した。生き残った住民は、露軍兵士が民家に侵入し、略奪や殺害を行ったと証言した。

だが、ロシア側は、遺体の写真や映像について、「ウクライナ政府が西側メディア向けに用意した作り物」などとし、「一人の住民にも手を出していない」と、うそぶいている。プーチン体制とは露軍の戦争犯罪についてまっとうに議論できるとは思えない。

東京は「ロシアの元軍人らが訴追されたウクライナ上空でのマレーシア航空機撃墜事件、国家ぐるみと認定されたソチ冬季五輪での大規模なドーピング不正でも、ロシアが非を認めたことはない」とした。さらに「倫理観が欠如したプーチン体制の体質も、軍の残虐行為を助長させているのではないか」と指摘し、今回のように不都合な事柄を平然と否定して恥じないところに、ロシアの大きな問題点を見いだしている。

これに対し毎日は、グテレス国連事務総長が「独立した調査が必要」と述べたことに触れ、一方の紛争当事者(ウクライナ)だけの調査では客観性を欠くとも説いた。「民間人殺害を否定するのなら、ロシアは独立した国際機関による調査に同意し、積極的に協力すべきだ」としている。

ロシアはICCを脱退しており、プーチン氏や高官ら関係者は、ロシアにとどまる限り、逮捕、訴追することは不可能である。日経は「とはいえ、どういう指揮命令のもとで、どのように犯罪行為が行われたかを明らかにする意義は大きい。二度とこのような暴挙を繰り返さず、被害者らの無念を晴らすためにも、ロシアによる侵略戦争の不当さや人道危機の実態を世界に示してほしい」と訴えた。

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