北九州市民の台所として長年親しまれてきた旦過(たんが)市場(同市小倉北区)の大規模火災を受け、北九州市は20日、庁内に復旧に向けたプロジェクトチームを発足させた。市のほか県や地元商工会議所も相談窓口を設置し、被災した事業者の支援に取り組む。被害は広範囲にわたり、市場の再開時期は見通せず、現在進めている再整備事業への影響も懸念される。
「想像を絶する激しい損傷に、大変な事態になったと実感した」。同市の北橋健治市長は同日、まだ焦げ臭さが残る被災現場を視察し、被害の大きさを目の当たりにした。
同市出身で、北橋氏と現場に入った福岡県の服部誠太郎知事も「小さいころから母に連れられてよく買い物に来ていた旦過が、このような姿になって呆然(ほうぜん)としている」と言葉を失った。
火災は19日未明に発生。市消防局によると、約1600平方メートルを焼き、40店舗以上が被害を受けた。けが人は確認されていない。
一夜明けた20日、市は産業経済局長を座長とする各局横断のプロジェクトチームを立ち上げた。オブザーバーとして県や北九州商工会議所も加わり、連携して事業者支援や今後の防火対策などに取り組む。
北橋氏は現地視察に先立つ記者会見で「つなぎ融資や仮店舗などの相談があると思う。まずは被害状況を把握し、相談窓口などを活用して要望を聞きながら被災者に寄り添った支援をしていく」と述べた。
旦過市場の誕生は大正時代初期で、100年以上にわたって「北九州の台所」として地元で親しまれている。鮮魚や青果、総菜など約110店舗が軒を連ね、多くの観光客も訪れる。
一方で建物の多くは昭和30年代に建てられ、老朽化した小さな木造店舗が密集しているため、市は延焼の危険などがあるとして一帯を特定消防区域に指定している。市場の一部は、そばを流れる神嶽川にせり出している構造で、川が豪雨によって氾濫し、浸水被害にもたびたび見舞われた。
こうした防災面が課題となっていたことから、市と民間が協力して再整備事業に乗り出した。計画では神嶽川を改修し、市場内に新たに整備する複合商業ビルなどに店舗を移転させる。令和9年度の完成を目指し、4年度からは店舗の解体が始まる予定だった。
再整備事業が動き出したところの大規模な火災に、計画への影響が懸念される。事業は、期間中も店舗が営業を続けられるように、4地区に分けて段階的に進める計画だ。今回、被災した店舗の多くは最も遅い7年度から着手する地区に立地し、再整備エリアに含まれていない飲食店なども被害を受けた。
北橋氏は「長い間の議論を踏まえてようやく再整備が決まった。あまり影響が出ないようにしたいという思いは、みんな同じだ。事業者とひざを突き合わせ相談していく」と話した。(小沢慶太)