打ち上げ花火の準備から会計・精算まで
「『たまやー』とさけびたいくらいきれいだった」
「迫力があって火花がとんでこないかハラハラしながら見ていた」
「『パチパチ』や『ドンドン』などの音もとてもよかった」
昨年8月7日、青梅市立今井小(東京)で初めて開かれた「お家から楽しむ打ち上げ花火」大会。校庭から上がった66発が約25分間にわたって夜空を彩り、児童から絵日記で喜びの声が寄せられた。
この花火は新型コロナウイルスの感染リスクを避けるため、集まらずに自宅で鑑賞できるイベントとして同校PTAが企画・運営した。発案した昨年度の会長、吉田わかなさんは「行事の中止が続いてきた子供たちに楽しい思い出を残したかった」と語る。
運営にはPTA本部8人のほか、会員から募った”サポーター”や地域住民12人が参加。本部はLINE WORKSに「花火」のトークグループを設定し、テーマ別に投稿を整理できる「ノート」機能上で連絡や報告、相談のほか、領収書データのやり取りなど会計・精算まで行った。当日まで集まる機会は設けなかったが、オンライン会議を併用し、「休日の朝にもアイデアが寄せられるほど、みんなで活発に意見を出し合っていいイベントにすることができた」(吉田さん)
仕事の隙間時間に意見交わす
次男が同校に通っていた吉田さんは2019年度からPTA活動に携わり、翌20年度に副会長に就任した。自動車業界で働いた経験からカイゼンの考え方が染み付いていたため、引き継ぎ時に厚さ約1センチもある書類束を手渡されて前時代的な手法に驚いたという。
しかし、就任直後から新型コロナの影響で、従来の会議や印刷物をベースにした運営スタイルは行き詰まる。活動へのあきらめの声も聞こえるなか、現在はフリーのライフコーチとしてオンラインセミナーも開く吉田さんがデジタル化を推進した。
当時、役員はLINEでつながっていたが、異なるテーマが混在して大事な連絡が「迷子」になることも。プライベートと切り分け、PTAの組織やテーマに沿ったグループの設定・管理ができるチャットツールを探し、最終的に選んだのがLINE WORKSだ。無料プランで必要な機能が使え、LINEと同様に操作できるハードルの低さに加え、「会員の入れ替えなど管理も簡単なので、ITに詳しくない役員にも引き継げる」(同)ことが決め手になった。
20年度はトーク(チャット)やオンライン会議の浸透を図りながら、手探りで活動を維持する下地を整え、昨年度は会長に就くと花火など新たな取り組みにも挑戦し、成功に導いている。2年間を通して全員が集まる会議は開かなかったが、吉田さんは「仕事や家事の隙間時間にもLINE WORKSで意見を交わし、スピーディに話し合いが進んだ。おかげで子供たちの楽しい学校生活を応援する活動を、無理なく楽しくできた」と笑顔で振り返った。
役員の手間が不要に
新型コロナ禍以前からLINE WORKSを活用する千葉市立幸町第一中PTA会長の安藤直裕さんは、「来年度は役員を選出する必要もなくなる」とさらに先を見据える。
IT関連企業を経営する傍ら、3人の子供の父親として小・中学でPTA会長を計10年務める。かつて仕事を理由に就任を一度断った経緯もあり「大変、堅苦しいというイメージを払拭したい」と効率化に取り組み、18年末にLINE WORKSの無料プランがスタートするといち早く採用した。トークやノートのほか、「行事などの予定を登録するカレンダーや、意見を募るアンケートなど活動に役立つ機能がそろい、会員がLINEのように気軽に使える」(安藤さん)ためだ。
当時の小学校PTAの副会長ら本部内で1~2カ月試行し、会議室の予約やアンケートの送り方など運営に即した使い方を固めた。役員への説明会を経て導入すると、意見のやり取りがトークやノートで済み会議が減ったうえ、印刷物もフォルダで管理するなどペーパーレス化が進み、「来校する機会が減り、仕事を休まずに活動できるようになった」(同)。
現在の幸町第一中PTAでも役員約40人で活用し、昨年度は会議を開かずに活動している。ただ、通常の無料プランは上限が100人で、約160人の会員全体に採用を広げられなかった。会員が持ち回りで担当する安全パトロールなどは、役員が日程を割り振って各学年へ手紙で知らせる習慣がいまも残る。
これに対し、2月にスタートした非営利団体向け特別プランは最大1000人まで利用でき、全員での導入も視野に入る。会長ら本部からLINE WORKSで会員に連絡し、必要な人手を募ることもでき、役員の手間が不要になる可能性がある。安藤さんは「PTAは保護者のネットワークをつくる場にもなる。地域のみんなで子供を育てる意識が根付くよう、楽に参加できる環境をつくりたい」とほほ笑んだ。
保護者の孤独に懸念
PTAは終戦の1945年に文部省(現・文部科学省)が発表した「新日本建設の教育方針」で、米使節団の報告書が設立・普及を推奨したことが始まりとされる。学校や地域と連携して子供のために活動する団体として広まったが、平日の会議や、休日の地域イベントへの協力など負担が大きく、近年は“不要論”がネットを騒がせる。
教育現場やPTAを長く取材するフリーライターの長島ともこさんは「共働き世帯の増加などで、専業主婦を想定した従来の運営スタイルは負の側面が大きくなってきた」と指摘する。この課題に直面し、リーダーが率先してデジタル技術を取り入れ、効率化を進める動きが表れる一方、いまだに任期が終わるまでの「我慢」と前例踏襲の体質が残るケースも多く“二極化”が進んでいるという。
2人の子供を育て、広報委員長の経験もある長島さん。「一方通行になりがちな印刷物やメール配信システムに比べても、相互に発信できるチャットツールは有効性が高く、この1~2年でLINE WORKSを導入したPTAは多い。新型コロナ下で、特に初めての子供が入学した親が相談相手を見つけられず孤独な状態に陥っていることも懸念される。敬遠されがちなPTA活動だが、教師が協力を求めることも、保護者が相談したいこともある。学校に向き合う団体として時代に即した運営の在り方を考えるべきだ」と話した。
提供:ワークスモバイルジャパン株式会社
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