原油高に脆弱な日本 赤字基調脱却には収支構造転換を

国内の主要エネルギー、液化天然ガス(LNG)を積んで桟橋に着岸するタンカー=令和2年1月、三重県川越町
国内の主要エネルギー、液化天然ガス(LNG)を積んで桟橋に着岸するタンカー=令和2年1月、三重県川越町

令和3年度の貿易統計は過去4番目の大幅な赤字を記録し、資源に乏しく原油高に振り回される日本経済の弱点が改めて浮き彫りになった。ロシアのウクライナ侵攻は有事の貿易停滞が世界的な資源価格の高騰につながるリスクを突き付けた。台湾危機も念頭に日本は備えを固める必要がある。貿易赤字が円安につながる負の連鎖を止めるには、原発再稼働を含むエネルギーの安定供給が欠かせない。

年度の貿易収支が赤字になるのは、平成23年度以降の11年間で8回目。赤字基調が定着した背景には東日本大震災の後遺症がある。原発の再稼働が進まず、再生可能エネルギーの普及も遅れたことで、ほとんどを輸入に頼る化石燃料を使った火力発電の依存度が発電量の約8割を占めている。

令和3年度は新型コロナウイルス禍からの景気回復に伴う需要増で原油価格が高止まりする中でウクライナ危機も加わり、赤字が一層増幅する結果になった。

西側諸国の対露制裁は資源大国ロシアからの供給が滞る不安につながり、原油だけでなく食料や木材、企業の生産活動に不可欠なレアメタルなどさまざまな原材料の価格を高騰させた。

地政学的リスクの高まりによるこうした経済の混乱は、台湾侵攻の野心を隠さない中国の動き次第で東アジアに飛び火する恐れがある。世界第2位の経済大国である中国との貿易が滞れば影響はロシアの比ではない。中東からの原油や天然ガスの輸送でタンカーが通過する台湾海峡を塞がれる事態になれば、エネルギー危機にも直結しかねない。

エネルギー価格の上昇は輸入代金の支払いに充てる外貨を調達するため円を売る動きを増やし、外国為替市場での円独歩安を助長する。円安が輸入価格を押し上げることで生活に身近な食品やガソリンなどが値上げされ、消費が冷え込む。

こうした負の連鎖を止めるには、原発再稼働などで化石燃料の購入に伴う国富の流出を抑止し、震災以降続く貿易収支の赤字構造を転換する必要がある。ウクライナ危機は、日本が10年超にわたり目を背けてきた課題の解決を促している。(田辺裕晶)

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