戦火のウクライナ

深夜バスで17時間、国境での「取り調べ」にドキッ

一時、避難民で混雑していたというポーランドのワルシャワ中央駅。平静さを取り戻していた=17日午後、ポーランド・ワルシャワ(桐原正道撮影)
一時、避難民で混雑していたというポーランドのワルシャワ中央駅。平静さを取り戻していた=17日午後、ポーランド・ワルシャワ(桐原正道撮影)

ロシアからの侵攻が続くウクライナ。東部の戦闘が激しさを増す一方、首都キーウ(キエフ)周辺からはロシア軍が撤退したのを受け、取材のために日本から記者と同行でキーウに入った。不定期だが私が実際に体験した現地の状況などを、文章と写真でレポートしたい。第1回はキーウ入りするまでの39時間の道中を…。

(写真報道局 桐原正道)

15時間のフライト でも先に進めない

ウクライナ入りの手段として選んだのは、ポーランド航空の直行便。現在はコロナ禍による減便で、週に1便だけの運航となっている。平時は約11時間で首都ワルシャワに到着するようだが、ロシア上空を迂回するため、15時間のフライトとなった。航空会社のスタッフによると「搭乗客は50人ほど」。半数はワルシャワから乗り継ぎ、欧州各地を目指す乗客のようだ。

ロシア上空を避けるために複雑な航路をたどっていることを示すポーランド航空の機内モニター=17日(桐原正道撮影)
ロシア上空を避けるために複雑な航路をたどっていることを示すポーランド航空の機内モニター=17日(桐原正道撮影)

当初の計画では、ワルシャワから1日に数本出ているという国際列車に乗車してキーウを目指すつもりだった。しかし、ワルシャワ中央駅に到着すると、キーウ行きの列車は「当分は満席」。駅のスタッフに教えられ、隣駅の国際バスターミナルに向かった。

ターミナルはウクライナに戻るとみられる子連れの女性や高齢者で混雑していた。1時間ほどチケットカウンターに並んだが「キーウ行きのチケットはもうないよ」。結局、また振り出しに戻ってしまった。

バスターミナルの窓口でウクライナ方面行きのバスについて問い合わせる人たち=17日午後、ポーランド・ワルシャワ(桐原正道撮影)
バスターミナルの窓口でウクライナ方面行きのバスについて問い合わせる人たち=17日午後、ポーランド・ワルシャワ(桐原正道撮影)

1人70ユーロ 戻る避難民で満員のバス

「キーウに行くのか?」

途方に暮れてバスターミナルを出ると、3人組の男性が声を掛けてきた。

どうやら正規の路線バスではないが、ウクライナ行きのバスを運行しているようだ。彼らはウクライナに戻る避難民らにも声を掛けていた。「明日の午前にはキーウに着くよ。1人70ユーロでどう?」

ポーランドの首都ワルシャワのバスターミナル前で、ウクライナ行きのバスの勧誘を受ける産経新聞の遠藤良介記者(左)=17日午後、ワルシャワ(桐原正道撮影)
ポーランドの首都ワルシャワのバスターミナル前で、ウクライナ行きのバスの勧誘を受ける産経新聞の遠藤良介記者(左)=17日午後、ワルシャワ(桐原正道撮影)

乗車したバスは国境を目指した。車内はほぼ満員で乗客はウクライナに戻る避難民ばかりのようだ。学生時代によく乗った4列の夜行バスに似ている。快適とは言えないがキーウまで乗り換えなしで行けるのはありがたい。

厳しい出国チェック 入国はすんなり

4時間ほどでウクライナとの国境に到着。乗客全員のパスポートが集められて出国審査が始まった。しばらくうたた寝をしているとポーランドの係官がバスに乗ってきて「日本人、荷物を全部持ってバスを降りろ」。バスのトランクから荷物をおろすと、国境沿いの建物の一室に連れていかれた。

国境でパスポートにロシアビザが貼られていることを問題視され、「取り調べ」を受けた部屋=18日未明、ポーランドとウクライナの国境(桐原正道撮影)
国境でパスポートにロシアビザが貼られていることを問題視され、「取り調べ」を受けた部屋=18日未明、ポーランドとウクライナの国境(桐原正道撮影)

昨年にフィギュアスケート男子の羽生結弦選手を取材する可能性があったため取得していたロシアの報道ビザが、パスポートに貼られていたことが問題視されたようだ。「キーウを抜けてロシアまで行くのか?」などと質問された。スーツケースを開けて手荷物を1つ1つ説明。「取り調べ」は15分ほどで終了した。

引き続きウクライナ側の入国審査が行われたが、こちらは事前にウクライナ国防省から取材の許可証を取っていたためか、すんなりと通過できた。

ポーランドの首都ワルシャワからウクライナの首都キーウ(キエフ)に向かう夜行バスの車内=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
ポーランドの首都ワルシャワからウクライナの首都キーウ(キエフ)に向かう夜行バスの車内=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)

途中、リビウを経由して国境から13時間、キーウ市内のショッピングモールでバスを降りたのは午後4時。バスに乗車してから17時間以上が経っていた。バスを探す時間を入れると日本を出国して計39時間でようやくキーウにたどり着いた。

ロシア軍による侵攻で破壊されたとみられる建物=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
ロシア軍による侵攻で破壊されたとみられる建物=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
破壊されたまま道路脇に放置された車両=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
破壊されたまま道路脇に放置された車両=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
破壊された戦車を調べるウクライナ兵=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
破壊された戦車を調べるウクライナ兵=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
破壊されたまま放置された戦車=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
破壊されたまま放置された戦車=18日午後、ウクライナ・キーウ近郊(桐原正道撮影)
ポーランドの首都ワルシャワからウクライナの首都キーウ(キエフ)に到着した夜行バス。18時間の長旅だった=18日午後、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)
ポーランドの首都ワルシャワからウクライナの首都キーウ(キエフ)に到着した夜行バス。18時間の長旅だった=18日午後、ウクライナ・キーウ(桐原正道撮影)

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