【ワシントン=渡辺浩生】ロシア軍が本格的な攻勢を始めたウクライナ東部ドンバス地域(ルガンスク、ドネツク両州)で激しい戦闘が続いている。米国防総省高官は露軍の攻撃について「より大規模な作戦の前触れだ」と述べ、攻撃がさらに激化するとの見方を示した。
ルガンスク州のガイダイ知事は19日までに同州クレミンナが露軍に制圧されたと発表した。クレミンナでは18日頃から露軍とウクライナ軍が市街地で激しい戦闘を展開。ウクライナ軍は後退したが、新たな防御線を再構築したという。
露軍は各地で抵抗に遭い、前進は一部にとどまっているもようだ。ウクライナ軍は19日、ドンバス地域の玄関口に位置する東部イジュム方面で露軍を撃退し、10台以上の戦闘車両やヘリコプター1機を撃破したと発表した。イジュム周辺の複数の集落を解放したとも主張している。
東部の要衝マリウポリでは、最後の拠点のアゾフスタリ製鉄所に籠城するウクライナ軍に露軍が再び投降を要求したが、ウクライナの親露派勢力によると投降者は5人にとどまり、20日午後に期限は過ぎた。露軍は要求に応じなければ「悲惨な結末」を招くとし、攻撃の激化を示唆していた。
一方、米国防総省高官は19日、露軍がイジュム南方やドネツク州南西部で限定的な攻撃を開始したことを確認。露軍は連日、露西部から補給を終えた戦闘部隊を投入し、ウクライナ東部での総力戦へ態勢固めを続けていると分析した。
高官はまた、ウクライナ国内の露軍の戦力が侵攻開始時点の75%に低下したとの概算を示した。ただ、露軍が「緒戦における補給の失敗から学び、適応しようとしている」と述べた。英国防省も20日、露軍がウクライナの東部国境で部隊増強を続け、戦闘が激化していると分析した。