ウクライナ東部「互角の戦いも」 兵頭慎治氏

防衛省防衛研究所政策研究部長の兵頭慎治氏
防衛省防衛研究所政策研究部長の兵頭慎治氏

ウクライナ東部をめぐるロシア軍とウクライナ軍の戦闘の先行きを見通すことは容易ではないが、互角の戦いになる可能性もあるとみている。

露軍は、保有する戦車などの数量では優勢だ。森や市街地だったキーウ(キエフ)近郊と違い、東部は平野で、火砲を使う地上戦が想定されるため、その点では露軍に有利だ。ウクライナ軍もチェコなどから戦車の供与を受けているが、戦力の〝量〟という側面で露軍は上回っているだろう。

ただ、露軍はこれまでの戦いで兵力を大きく消耗していて、部隊の士気も低い。その部分は相当のハンディになる。一方でウクライナ軍は欧米諸国などから追加の装備支援を受けていて、戦力の〝質〟は保持できている。東部を譲れないという強い危機感も持っており、露軍に徹底抗戦するだろう。

焦点の一つは、要衝のマリウポリがいつ露軍に完全制圧されるかという点にある。その推移によって、露軍がどれだけ東部の他地域での戦いに集中できるかに違いが出るからだ。

ウクライナ軍が籠城する市内の製鉄所構内にはまだ2500人規模の部隊がいるとされ、これは相当の数だ。多数の民間人もいるという。構内は非常に複雑な構造で、露軍はそう簡単に制圧はできないだろう。

製鉄所内にはウクライナ軍とともに、マリウポリを拠点とするアゾフ大隊の部隊がおり、キーウにいる部隊が応援に入ろうとしていると聞く。このような状況も、露軍がマリウポリを容易に制圧できない要因となる。

ウクライナ軍の動きがあまり見えてこないのは、露側に手の内を明かさないように、意図的に隠しているのだと思う。露軍がこれまでも東部を制圧できなかった事実は、今回の戦いで決して露軍が優位ではないことを示唆している。

今後は、親露派勢力が5割程度しか制圧できていないとされるドネツク州での攻防がポイントとなる。双方ともこの戦いに多くの兵力を投入するため、戦闘は総力戦の様相となるだろう。(聞き手 黒川信雄)

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