ウクライナから避難のチェロ奏者親子、望郷の思いで「ふるさと」演奏

演奏会でチェロを奏でるウクライナ人のテチアナ・ラブロワさん(左)と娘のヤーナさん(右)=18日午後、杉並区役所
演奏会でチェロを奏でるウクライナ人のテチアナ・ラブロワさん(左)と娘のヤーナさん(右)=18日午後、杉並区役所

ロシアの侵攻が続くウクライナから杉並区に避難してきたチェロ奏者の親子が、音楽を通じて平和を訴えようと演奏活動に取り組んでいる。「私たちは破壊のために生まれてきたのではない」。望郷の思いを込め、8千キロ余り離れた日本から美しい音色を響かせている。(竹之内秀介、写真も)

18日、杉並区役所のロビーで開かれたコンサートにゲスト出演した、いずれもウクライナ人のチェロ奏者、テチアナ・ラブロワさん(53)と娘のヤーナさん(30)。平和の歌として世界的に知られるカタルーニャ民謡の「鳥の歌」などを演奏した後、アンコールとして日本人奏者4人とともに唱歌の「ふるさと」を弾いた。

コンサートの終わり際、テチアナさんが「私は日本にいるが、今も古里のことを思っている。私たちは破壊をするために生まれてきたのではなくて、つくり出すためにこの世界にいる」と語りかけると、観客から温かな拍手が送られた。

終演後にはロビーに設置されたウクライナ人避難民支援のための募金箱の前に、長蛇の列ができていた。杉並区の無職の女性(67)は「演奏を聞くにつれて、ウクライナの現状に思いをはせ、思わず涙がこみあげてきた。心ばかりの額だが支援したい」と話した。

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ラブロワさん親子は同日、区役所で記者会見に臨み、ウクライナに親戚が残っている中、安全な日本で生活を送ることについて複雑な心情を吐露した。

首都キーウ(キエフ)でウクライナ国立歌劇場のチェロ奏者を務めていたテチアナさんだが、ロシア軍の侵攻開始後、自宅近くが砲撃されるようになり、国外への避難を決めた。ウクライナ西部のリビウでヤーナさんと合流。国立歌劇場の公演で訪日経験があったこともあり、友人の日本人の誘いで3月28日に日本に入国した。脱出の道中は混乱しており、「楽器を持って逃げることさえできなかった」(テチアナさん)

現在は杉並区で住民登録を行い、友人から衣食住の支援を受けつつ、生活を送っている。

ヤーナさんは「日本では本当に多くの人に助けてもらっている。大変いい印象を持っており、日本語の勉強も始めた」と笑顔を浮かべる。だが同時に、親戚がウクライナに残っていると明かし、「祖国の人たちが危険にさらされている中、私たちだけが安全に暮らしているのは複雑な思いがある」とも話した。

区によると、18日のコンサートへの参加はラブロワさん親子の「演奏に携わりたい」という希望を踏まえ、区の調整で実現した。2人は今後も演奏活動を続けていきたいとしているが、具体的な予定はなく、先行きは見通せない。

会見に同席した杉並区の田中良区長は「音楽で祖国の復興のために役立ちたいという2人に敬意を表したい。これからも演奏の機会をつくれるよう、区としてもサポートしていきたい」と力を込めた。

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