過度な節税に「伝家の宝刀」 不動産相続めぐる最高裁判決

最高裁判所=東京都千代田区(鴨川一也撮影)
最高裁判所=東京都千代田区(鴨川一也撮影)

路線価に基づき算出した遺産相続マンションの評価額が市場価格より低すぎるとして国税当局が例外規定を適用した追徴課税処分。相続税の節税対策として富裕層の間では不動産を購入するケースがみられる。首都圏などで不動産価格の高騰が続く中、今回の最高裁判決は、不動産を用いた過度な節税に一定の歯止めをかける司法判断となりそうだ。

相続税法では、相続で取得した財産の価値は「時価」(市場価格)で評価すると規定されている。路線価は一般的に、市場価格の8割程度の水準とされているが、実際は大幅な差が生じることも多い。

国税当局が適用した例外規定は、めったに使われないことから関係者の間で、「伝家の宝刀」と呼ばれている。行き過ぎた節税対策をただし、課税の公平性を保つために運用されるものだ。国税関係者は「(適用する際に)明確な基準があるわけではなく、個別に、慎重に判断している」と強調。実際に適用されるのは年に1回程度という。

判決を受け国税庁は「今後とも適正・公平な課税に努める」とのコメントを発表した。

一方で、判決では例外規定がどのような場合なら適用されるかといった、一般的な基準は示されなかった。判決後に記者会見した原告の弁護団は「基準を示してほしかった。税務署の担当者によって、恣意(しい)的な課税が可能になりかねない」と不満を述べた。

相続税問題に詳しい税理士法人レガシィの大山広見税理士は「今回のケースでは、市場価格と路線価による評価額に4倍以上の開きがあった上、金額や不動産を取得した年齢など、複数の要因が重なったことで『明らかな節税対策』とみなされた」と指摘する。

今後の影響については「金額が低い取引は問題ないが、高齢者に対する相続目的の高額な不動産購入の勧めには、業界は慎重にならざるをえないだろう」と話した。(原川真太郎、石原颯)

会員限定記事会員サービス詳細