「小学校の欠席届をオンライン化してほしい」「病児保育をもっと充実させてほしい」-。そんな住民の声を受け、区議会議員らが解決へと動いてくれるよう橋渡しをするウェブサービス「issues(イシューズ)」。主に都内の子育て世代が利用する政策実現プラットフォームを立ち上げた広田達宣さん(33)は、日常の困り事を政治に届けて解決する「時代の変化に合った意義のあるインフラを担っていきたい」という。
学校連絡をネットで
同サービスは、解決してほしい課題をウェブサイトで要望すると、自治体で解決可能なものはトピックスとして掲載され、該当する地域の区議らが対応してくれる。住民の利用は無料で、議員向けには有料プランも設けている。議会で質問したり自治体へ働きかけたりする進捗(しんちょく)状況は、メッセージ機能を通じて直接報告が届く。
登録されたトピックスには、「小学校のプリント連絡をオンライン化してほしい」「学童保育に通わせる親が長期休みに手作り弁当を用意する負担を減らしてほしい」「自転車レーン上の路上駐車の対策を強化してほしい」-など、学校生活や子育て環境など多岐にわたる。
特に「小学校の欠席届をオンライン化してほしい」という要望は多くの支持を集め、板橋区などの自治体で解決された。要望の中には以前から協議されていた課題もあるが、同サービスに寄せられた「住民の声」が後押しにつながっているという。
「政治の力」不可欠
「未来の自分たち夫婦や同世代が直面する課題を解決したい」という思いが、広田さんの原動力だ。平成28年、結婚を控えた交際相手と「子供ができても仕事と子育てを両立したいね」と話していた矢先、「保育園落ちた日本死ね!」という匿名ブログを読んだ。「子育てや介護などライフステージによって生じる課題を解決する仕組みを作らないと大変だ」と感じたという。
保育の実情を知ろうと保育士資格も取得して現場に携わる中、待機児童や病児保育、公園の環境整備など、「政策でしか解決できないことがある」と気づいた。特に保育園や公立小学校の課題解決には政治の力が不可欠。「新しい世代、ライフスタイルに合わせた住民の課題解決ができるインフラが必要だ」と、同サービスが生まれた。
負担なく困り事解消
政治は「困り事を解決するために使うのが本来の姿」と広田さん。ただ、個人で自治体へ要望するハードルは高く、社会構造の変化や新型コロナウイルス禍により、議員が地域課題を吸い上げることも困難になってきている。
政治への関心も薄れる一方で、住民は「保育園の困り事などの『イシュー(問題)』には興味がある」。要望を軸に住民と議員をマッチングすることで、負担なく困り事を解消できる。また「議員が解決してくれた体験」は、政治を身近に感じ、選挙など政治参加の意欲にもつながるという。
同サービスでは、得られた要望や体験談、他のユーザーからの賛否などのデータベースの公開も始めた。住民の声の蓄積を「議員の政策や自治体の制度設計の材料に活用してほしい」と、さらに政策の実行に向けた後押しをしていく。
「理想の民主主義の実現ではなく、困り事を解決するサービス。政治でしか解決できない課題に直面したとき、ここにSOSを出せば助けてくれるというインフラを作りたい」
(鈴木美帆)