第二次大戦後にシベリアで抑留された日本人が、現地のシラカバなど限られた材料を駆使して制作した「ラッパ付きバイオリン」が昨年末、研究者らによって再現された。ラッパ付きである理由は、バイオリンの音色をより遠くに響かせ、過酷で劣悪な環境の中で働く抑留者を一人でも多く癒やすためだったとみられる。ロシアに残る写真や文献、抑留者の手記や証言などをもとに令和の時代によみがえったバイオリンの切なく美しい音色は、動画サイト「ユーチューブ」で公開されている。
第二次大戦後、日本人約60万人が旧ソ連に抑留され、「極寒」「飢餓」「重労働」の三重苦の過酷な生活を強いられた。このうち5万8千人以上が死亡したとされる。
「生死の間にあった人々を癒やすため、音楽は収容所生活に欠かせなかった」と、ラッパ付きバイオリンの再現を企画・監修した桜美林大学非常勤講師、森谷(もりや)理紗氏は話す。