主張

科学技術週間 研究開発を支える社会に

18日から24日までは科学技術週間である。科学技術への理解と関心を深め、科学技術の振興を図ることを目的に昭和35(1960)年に制定された。

資源の乏しい日本が持続的に繁栄し、国際社会から必要とされ、尊敬される国であるためには何が大事か。国民の多くが「科学技術」を挙げるだろう。

その日本の科学技術力が危機的な低落傾向にある。

新型コロナウイルスのワクチン開発で、日本は世界のトップグループのスピードについていけなかった。ワクチン供給に関しては日本は国際社会から必要とされる国になれなかった。

医療機関と行政、国民の間で必要な情報交換や手続きをめぐっては、デジタル化分野の後進性が露(あら)わになった。

科学技術の低落は大学や研究機関だけの問題ではない。日本社会全体にとって極めて重大で深刻な危機だと認識する必要がある。

岸田文雄政権は、若手を中心とした研究支援策として10兆円規模の基金を創設した。ただし、対象となる大学を絞り、世界のトップ大学に迫ろうという運用方針は、短期的な成果や経済波及効果が偏重された近年の「選択と集中」路線と同じだ。研究現場の活力を削(そ)ぐ要因にもなりかねない。

科学技術を成長戦略の柱と位置づけ、短絡的にイノベーションを期待するだけでなく、科学研究を志す人材を幅広く支え、育む取り組みが、科学技術の再生には不可欠である。

その一つとして、就職・採用の慣行を抜本的に改めることを挙げよう。博士号を取得する学生は減少傾向にある。若手研究者の身分と待遇が不安定であることと、博士になると民間企業などへの門戸が著しく狭まることが、その原因と考えられる。博士の資格が不利にならない就職・採用の仕組みを産業界と大学、政府、国民が連携して構築すべきだ。広い意味で研究開発の人材を支え、育むことになるだろう。

日本の科学技術の低落を、一気にV字回復させる特効薬はない。一方、ノーベル賞の自然科学3分野で、日本は2000年以降に米国籍3人を含めて20人もの受賞者を輩出してきた。幅広く、時間をかけて研究者を支え、育む土壌を肥やせば、独創的な成果を実らせる日は必ずくる。

会員限定記事会員サービス詳細