コロナで窮地の学生食堂を救え Z世代の運営レシピ

売り物にならないブロッコリーを使った料理を試作するメニュー開発チームの生徒(三本松高校提供)
売り物にならないブロッコリーを使った料理を試作するメニュー開発チームの生徒(三本松高校提供)

新型コロナウイルス禍の影響などを受け、高校の学食が窮地に立っている。香川県の場合、県立高校29校のうち、24校に学食がありPTAが経営主体で運営し、民間業者に委託しているケースが多いが「一般的な状況として、利用率が低く採算面で厳しい」という。そうしたなか、東かがわ市の県立三本松高校では「三高みんなの食堂プロジェクト」としてメニュー設定から新たな収入源の模索まで食堂運営に生徒たちが主体的にかかわるプロジェクトを実施。学食を中心に学校と地域との結びつきを強め、地域の活性化にもつなげようという取り組みを進めている。

調理を担当するのは地域の農業法人。自ら栽培した野菜も無駄なく使ってメニューに生かしている=香川県東かがわ市
調理を担当するのは地域の農業法人。自ら栽培した野菜も無駄なく使ってメニューに生かしている=香川県東かがわ市

提供ロスを出さない

高校の学食は、コロナ禍で登校の回数が減ったり生徒が密を避けようとしたりして利用率が下がっているほか、人件費や原材料費の高騰もあって、厳しい経営状況に陥っているところが多い。

学食という性格上、値上げは難しく、メニュー数の絞り込みや内容の見直しなどで対応するとさらに利用者離れが起きるというのが現状だという。

三本松高校は定時制課程を含め生徒約410人、教職員約50人。プロジェクトは全校生徒の参加プロジェクトとして令和2年9月にスタートした。

プロジェクトでは、志願したリーダー42人を中心に、総務▽イベント企画▽メニュー開発▽畑▽内装▽デジタル広報▽アナログ広報-の7つのチームを編成。

総務は、運営費の管理や冷凍飲料販売による収入源の模索、改善アンケートの実施、CM制作などを担当。イベント企画は、餅つきなどの季節行事や、地域の飲食店の料理人を招いた一日食堂の開催といった企画を考えている。

メニュー開発は、食材にならず捨てられる部位で料理を試作。畑は自分たちでグラウンドの一隅を開墾して野菜を栽培し、サービスサラダにしたり学食で販売したり。フードロス削減や地産地消を意識した活動に取り組む。

内装は、地場産業の手袋製造の端材でのれんを作った。デジタル広報はプロジェクト専用ウェブページを運営して内外に活動内容を発信し、アナログ広報は毎日のメニューのイラストやイベントのポスターの作製などを行っている。

泉谷俊郎校長は「生徒全員を巻き込むことが不可欠で、安全で栄養面でもいいものを提供したいと考えた」と話す。

提供するのは日替わり定食(400円)とお弁当(370円)で、1日各30~40食という。事前に食券を購入し、ロスが出ないよう作る数をほぼ確定する。

地場産業の手袋製造で出た革の端切れを使って文字をデザインした学食ののれん。内装チームが作製した
地場産業の手袋製造で出た革の端切れを使って文字をデザインした学食ののれん。内装チームが作製した

地元の飲食店が一日食堂

農家に作物の育て方を教わったり、家庭で使っていない食器やお盆の提供を呼びかけたりと、地域の人たちをはじめ卒業生らとの交流も広がる。

一日食堂は飲食店などに1日限りの出店をしてもらう取り組み。今年1月には、イタリアンレストランの佐々木祐紀さんが500円で各50食の定食と弁当を提供した。

学食の調理場で、トマトのショートパスタや野菜スープ、パンナコッタなどのメニューを仕上げた佐々木さんは「生徒がおかわりしている姿などを見て、活動に参加でき、交流のきっかけができたことをとてもうれしく感じた」と話していた。

生徒たちも活動を通じて、東かがわ市の特産品や地域社会・地域経済の成り立ちなどを知り、協力してくれる人たちに感謝し、魅力を理解し地域の一員としての自覚が強まってきた。

今後は、地域の人たちにも学食を利用してもらい、地域を元気にする拠点として、交流を深めて高齢者の孤立化を防ぎたいと考えているという。

一日食堂で学食の食器に盛り付けられたイタリア料理(三本松高校提供)
一日食堂で学食の食器に盛り付けられたイタリア料理(三本松高校提供)

学食運営の課題として、利用時間が実質30~40分と短くて集中するほか、長期休暇の利用激減問題などが挙げられるが、地域の事業所やイベントなどで弁当を購入してもらい、運営の安定化を図っている。

プロジェクト代表の亀井遼樹(はるき)さん(17)は「地域への感謝の気持ちを深められるよう全校生徒で考えていきたい」。副代表の松木俊輔さん(17)は「社会で生きていくために必要な力が養えている」と話していた。(和田基宏)

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