ロシアによるウクライナ侵攻で、露国防省は17日までに東部マリウポリの市街地全域を制圧したと主張した。市内で未制圧なのはウクライナ守備隊が拠点とするアゾフスタリ製鉄所だけだとし、守備隊に投降を呼びかけた。ウクライナ側はロシア側の主張を否定。ただ、米欧側でも同市の陥落は目前だとの見方が強く、約1カ月半にわたり続いてきたマリウポリ攻防戦は最終局面を迎えつつある。
露国防省は17日、北部キーウ(キエフ)州ブロバルイの弾薬工場をミサイル攻撃で破壊したと発表。16日もウクライナ東部を中心にミサイル攻撃を継続し、複数の弾薬庫などを破壊したほか、南部オデッサ周辺では米欧から供与された装備の運搬を担ってきたウクライナ軍輸送機を対空ミサイルで撃墜したと主張した。
マリウポリについて露国防省は16日、「市街地からウクライナ守備隊を完全に掃討した」と主張。残存守備隊が籠城するアゾフスタリ製鉄所も露軍が完全に包囲しているとし、当初8000人規模だった守備隊は2500人以下まで減少したと指摘。同省は17日、守備隊に午後1時(日本時間同7時)までに投降するよう求めたが、期限までに投降の動きは伝えられていない。同省報道官は、守備隊に「さらに抵抗を続ければ全滅させる」と警告した。
露国防省の発表に対しウクライナ当局は16日、SNS(交流サイト)で「虚偽だ」と反論。露側の投降要求に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「部隊が全滅すれば交渉に終止符を打つ」と述べ拒否。停戦交渉中断の構えも示した。
ただ、守備隊は補給を受けられず孤立。米シンクタンク「戦争研究所」は露軍が近く同市を制圧する可能性があると分析している。
マリウポリは露軍が約1カ月半にわたって包囲し、激しいミサイル攻撃や砲撃を加えてきた。ウクライナ側は2万人を超す民間人が犠牲になっていると推計している。ロシアは同市を陥落させ、「独立」を承認した東部の親露派武装勢力の実効支配地域と、2014年に一方的に併合した南部クリミア半島を陸路で結ぶ思惑だとされる。
東部攻略に注力するロシアにとり、マリウポリ掌握は「戦勝」をアピールできる一定の成果ともなり、各国の専門家は攻防の帰趨(きすう)を注視している。