探訪

陽のあたる坂道「昭和」が駆ける 善意で修繕費 岡山・高梁市

約500メートルの高低差をものともせず、坂道を力強く駆け上がる昭和62年製造の備北バスの車両。今も現役の働き者だ =岡山県高梁市(川口良介撮影)
約500メートルの高低差をものともせず、坂道を力強く駆け上がる昭和62年製造の備北バスの車両。今も現役の働き者だ =岡山県高梁市(川口良介撮影)

ヨイショ、ヨイショ…。

角張った〝昭和顔〟のバスは、そうつぶやいているように見えた。

山の斜面に張り付いたような家と畑。カーブの先からエンジン音を響かせ、バスがやってきた。急勾配をものともせず、坂道を駆け上がってくる。一見、のどかに映る山村の光景。その〝足〟を守ろうとする取り組みが進められている。

「昭和の路線バスの延命にご支援を」―。

岡山県高梁市の「備北バス」が乗り出したのは、クラウドファンディング。バス2台の維持のため、インターネットを通じ、賛同者から資金を募っている。

高梁市が観光の目玉として期待を寄せる、平成24年まで現役最古の木造校舎として使用されていた「旧吹屋小学校」。保存修理工事を終え、今月21日から再公開される =岡山県高梁市(川口良介撮影)
高梁市が観光の目玉として期待を寄せる、平成24年まで現役最古の木造校舎として使用されていた「旧吹屋小学校」。保存修理工事を終え、今月21日から再公開される =岡山県高梁市(川口良介撮影)

2台は昭和60年代に製造され、現役で走る中型路線バスとしては、日本最古参という。それだけに老朽化が進み、すぐにでも修理が必要な状況だ。募集期間は4月28日までで目標は400万円。寄付金額に応じ写真集や名前を掲載した社史などの返礼がある。

現在、過疎が進む地方の市町村は、鉄道やバスなどの公共交通の維持という課題に直面している。高梁市も例外ではない。備北バスの年間利用者数は昭和40年度は延べ約722万人だったが、令和2年度は同約60万人にまで減少した。

備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)

さらに近年、追い打ちをかけているのが新型コロナ禍。路線バス以外に、会社が手掛けている観光バスや高速バス事業にも、大きな影を落としている。

だが、備北バスがクラウドファンディングに踏み切ったのは、資金調達だけが理由ではない。

「お金以上に、この地域と路線バスを知ってもらう機会にしたい」と同社総務部の小室卓司さん(43)は話す。過疎に悩み、テレビや雑誌に〝秘境〟として取り上げられることすらあるが「ここにはまだ生きとる人がおるんじゃ」と強く訴える必要があると考えたという。

備北バスの2511号の車内 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2511号の車内 =岡山県高梁市(川口良介撮影)

1台分の修理費用は集まったが、目標にはまだ達していない。「路線バスの廃止は、沿線地域そのものの消滅」(小室さん)。地元と賛同者の善意に応えながら懸命に走るバスに、心のなかで掛け声を送った。

ヨイショ、ヨイショ!

(写真報道局 川口良介)

備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
吹屋ふるさと村の赤い町並み =岡山県高梁市(川口良介撮影)
吹屋ふるさと村の赤い町並み =岡山県高梁市(川口良介撮影)
吹屋ふるさと村の赤い町並み =岡山県高梁市(川口良介撮影)
吹屋ふるさと村の赤い町並み =岡山県高梁市(川口良介撮影)
吹屋ふるさと村の赤い町並み =岡山県高梁市(川口良介撮影)
吹屋ふるさと村の赤い町並み =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2350号(左)と2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2350号(左)と2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)
備北バスの2511号 =岡山県高梁市(川口良介撮影)

会員限定記事会員サービス詳細