原油高騰で高まるEVの需要は、「最悪のタイミング」でやってきた

米国ではポストコロナの活動再開がもたらした需要増により、ガソリン価格はすでに高騰していた。一方で、世界の原油と天然ガス供給の鍵を握る国々は、パンデミックの影響で縮小した生産量の本格的な回復には踏み切っていなかった。

そこへ起きたのがロシアによるウクライナ侵攻だ。ロシアの産業に対する世界規模の制裁によって原油市場には甚大な圧力がかかり、世界中の原油価格を押し上げている。

米国の場合、原油の輸入に占めるロシアへの依存度は低い。それでもアメリカ自動車協会(AAA)によると、米国内のガソリン小売価格は3月11日に全米平均で1ガロン(約3.8ℓ)が4ドル33セントを記録した。カリフォルニア州では29日に5ドル91セントにもなっている。これは2008年の景気後退以来の高値だ。

深刻な半導体不足の影響

こうしたなか、ガソリン市場を襲った同じ災難が自動車産業にも襲いかかっている。

半導体はいまや玩具から電球、産業機械までありとあらゆるものに埋め込まれるようになり、その需要はパンデミック以前から拡大していた。自動車産業も例外ではない。最もベーシックなガソリン車でも、エンジンや安全システム、インフォテインメントシステムを動かすために100個程度はチップを必要とする。最新のEVなら1,000個を超えるだろう。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによる供給不足の影響で、自動車メーカー各社は必要なチップの確保がますます難しくなっている。追い打ちをかけるように起きたウクライナ侵攻により、この危機にさらに拍車がかかるとアナリストらはみる。

半導体の製造にはレーザーの動力源としてネオンガスが必要だが、ウクライナはネオンガスの主要な製造国だ。米国は半導体の増産に努めているが、これから何年かは結果に結びつかないだろうと専門家はみる。

半導体不足が主な原因で、米国内の今年の自動車販売台数は例年を200万台下回る1,500万台程度にとどまるかもしれないと、自動車業界に長年かかわりサプライヤー向けのコンサルティングを手がけるウォーレン・ブラウンは分析する。「半導体不足はあらゆる方面に容赦なく影響します」

半導体不足はインフレとも連動する。米国の消費者物価指数は今年2月、前年同月と比べて7.9%上昇した。自動車メーカーの部品購入コストが上がれば、そのしわ寄せはおそらく買い手に及ぶと、ブラウンは言う。つまり、自動車の価格がすぐに下がることはないと言っていいだろう。

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