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クリエイティブディレクター 佐藤可士和『世界滅亡国家史』 崩壊はささいなことで起こる

『世界滅亡国家史』(ギデオン・デフォー著、杉田真訳)
『世界滅亡国家史』(ギデオン・デフォー著、杉田真訳)

『世界滅亡国家史』ギデオン・デフォー著、杉田真訳(サンマーク出版・1650円)

「国がある」「国が消える」とは? そもそも「国境」とは何か-。

<国は思わぬ形で生まれて消える。>という帯の言葉に、思わず本を手にとった。著者は英オックスフォード大学で考古学と人類学を専攻した作家であり、アニメ脚本家のギデオン・デフォー氏。出版直後から英米で絶賛され、アマゾン・コムでも地理分野の新刊でいきなり1位を獲得したそうだ。ほんの三十数年前には存在していたドイツ民主共和国(東ドイツ)やユーゴスラビア、貿易で栄えたヴェネツィア共和国から、ラフ・アンド・レディ大共和国、リフレッシュメント諸島、ボトルネック自由国など初めて目にする国名まで、歴史の中に消えていった48カ国のストーリーが紹介されている。

特筆すべきはそのスタイルで、ひとつの国につき5~7ページ(うち2ページは存続年代や滅亡原因、言語などをまとめた扉と地図)という短さ。複雑に入り組んだ民族の長い歴史を紐(ひも)解く重厚な歴史書はちょっと…とためらう向きにはぴったりの入門書だろう。

たとえばバイエルン王国の傾国の端緒となった、ルートヴィヒ1世退位の一因として「アンダルシアの踊り子」ことローラ・モンテスとの恋があり、「彼女が去ったあとには混乱だけが残った」と説明されている。読者によってはローラ・モンテスという人物をさらに深掘りしたり、あるいはバイエルン王国などから今のドイツが形成される歴史を改めてたどったりと、この本をきっかけにさまざまなアプローチで世界史への興味を広げていくことだろう。

ユーゴスラビアの章ではこう語られている。「ほかの地域の人々にも言えることだが、(略)相互不信の原因にもなっていたのは、コーヒーや見栄や金にも見られる『他者との違い』という実にささいなことだった。しかし、国家の崩壊は、そんなささいなことをきっかけにして起こり得る」。今、目をそらしてはいけないことが随所に散りばめまれている。

『現代語訳 学問のすすめ』(福澤諭吉著)
『現代語訳 学問のすすめ』(福澤諭吉著)

『現代語訳 学問のすすめ』福沢諭吉著、檜谷昭彦訳・解説 (三笠書房・628円)

自立した個人であるために、そして社会を発展させていくために、人は学び続けなければならない。なぜ学ぶことが大切なのかを説いた名著。現代語訳で読みやすく、この難しい時代にこそ、考える糧にしたい一冊。

さとう・かしわ〉昭和40年、東京生まれ。多摩美大卒。クリエイティブスタジオ「SAMURAI」を主宰し、企業のブランド戦略やデザインなどを手掛ける。


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