記者発

「特殊詐欺」主犯格を追い詰めろ 大阪社会部・江森梓

大阪府警は今年度、特殊詐欺の捜査に特化した「特殊詐欺捜査課」を新設した。知能犯を捜査する捜査2課内にあった「特殊詐欺対策室」から格上げされる形で、全国的にもこうした課は珍しい。暴力団など組織犯罪に関して知識や経験が豊富な捜査員を投入し、特殊詐欺対策室から約40人多い110人態勢で捜査に臨んでいる。

背景にあるのは、特殊詐欺の捜査の難しさだ。警察庁によると、令和3年の全国の特殊詐欺の認知件数は1万4461件で、前年より911件増加した。これに対し、3年に特殊詐欺事件にからんで検挙された人数は、前年より256人少ない2365人。このうち犯行グループの主犯格は45人にとどまる。

特殊詐欺は、暴力団や「半グレ」と呼ばれる不良集団などの犯罪組織が、交流サイト(SNS)などで実行役を募って、高齢者らから多額の現金をだまし取るケースが多い。

ただ、捜査の網にまずかかるのは、大抵が被害者に直接対面して金銭をだまし取る役割などを担う実行犯だ。主犯格は実行犯らの役割を細分化した上で、自身の素性が分からないように指示を出すことが多く、捜査の手が主犯格にたどりつくのは難しい。

実行犯は摘発されるリスクが高いばかりか、主犯格側からノルマの達成を迫られるなどして精神的に追い詰められるケースも確認されている。少年も多く、全国の警察は、少年らが特殊詐欺に加担しないようSNS上で注意喚起などを行っているが、主犯格が摘発されない限りは年々手口を巧妙化させる犯罪グループとのいたちごっこになる可能性もある。

そうした状況を踏まえ、府警に新設された特殊詐欺捜査課では、組織犯罪の捜査に携わってきた捜査員らのノウハウを生かし、さまざまな法令を多角的に適用した捜査を行う。容疑者の摘発のみならず、背後にいるとみられる暴力団などの情報収集にも積極的に乗り出し、犯罪グループの実態解明と壊滅を目指す。

壊滅させれば、関わっている暴力団などにも大きな打撃を与えられる。何よりも、大切な財産を奪われて悲しむ被害者を減らすことができるはずだ。卑劣な犯罪を許してはならない。

【プロフィル】江森梓

平成20年入社。京都総局、大津支局、堺支局などを経て、30年から大阪本社社会部。現在は大阪府警の警備部門を担当。

会員限定記事会員サービス詳細