難産を避けるために人間の赤ちゃんの鎖骨の成長は出生が近づくと遅くなり、出産後には加速する-。京都大などの研究グループはこうした研究結果を米科学アカデミー紀要に発表した。チンパンジーやマカクザルでは同様の傾向は見られず、グループは「難産というリスクを避ける人特有の成長パターン」としている。
グループによると、広い肩幅は人の骨格の特徴で、二足歩行を安定させることや狩りのためにやりを遠くに投げるため、重要な役割を果たす。一方で、骨盤は小さく、産道も狭い。難産を避けるために、胎児の頭は頭蓋骨が出産時、未発達でやわらかい状態にあることが判明しているが、肩幅については仕組みが不明だった。
グループは約4年前から、人の胎児~成人の81人のほか、チンパンジーとマカクザルを含む計176体の骨格をCT撮影するなどし、肩幅に関係する鎖骨の大きさや成長速度を分析。
その結果、胎児は出生前、鎖骨がほかの部位と比べて成長の速度が遅くなっていた。さらに誕生後には、その分を補うように成長が加速していくことが分かったという。四足歩行で産道が広いチンパンジーや、肩幅が狭いマカクザルでは、人のような分析データは得られなかった。
グループの一人で京大の森本直記准教授(自然人類学)は「小さく生まれて大きく育つという、人の成長のユニークさが明らかになった。こうした仕組みがいつから始まったのか詳しく検証したい」としている。(森西勇太)