VR店舗・仮想空間で研究…活用進む 感染症対策や効率化 企業に利点多く

凸版印刷が仮想空間〝メタバース〟内に設置した大卒新入社員専用のコミュニケーションスペース(凸版印刷提供)
凸版印刷が仮想空間〝メタバース〟内に設置した大卒新入社員専用のコミュニケーションスペース(凸版印刷提供)

その場にいなくてもあたかもその空間にいるような体験を実現する仮想現実(VR)や、3次元(3D)仮想空間「メタバース」の利用がビジネス分野で広がってきた。最先端のデジタル技術を駆使することから、ゲームや音楽といった斬新さを好むエンターテインメント分野での活用が先行してきた。それが最近では、感染症対策や効率化の一環で研修やインターネット通販に導入する企業が増加。〝よりリアルな体験〟は、ビジネス用途で一気に普及が進みそうだ。

イオングループのイオンリテール(千葉市美浜区)は、VRを活用した従業員教育を今月から始めた。同社は東北以外の本州と四国で総合スーパーの「イオン」と「イオンスタイル」を展開しているが、その全店舗(約360店)にVRの事業活用を推進するベンチャー企業、InstaVR(東京都港区)のシステムを導入した。従業員は頭部に装着するゴーグル型ディスプレーを通して、1000以上の研修コンテンツでレジの操作方法や接客、売り場づくりなどを学ぶ。

令和2年12月から一部店舗で行った実証試験では、参加者の約9割が「テキストや動画での学習より作業手順の理解が深まった」と回答。指導者となる社員の参加時間も1店舗1カ月当たり平均約40時間削減できるなど、教育する側と受ける側の双方にメリットが大きい。同社は「年間7000人前後の新入社員・パート教育に活用するが、今後は店内調理の手順や魚のさばき方といったスキルアップ研修にも活用していく」(広報担当)方針だ。

凸版印刷も新型コロナウイルス感染拡大防止のため研修での仮想技術の活用を拡充する。昨年度に大卒新入社員研修でVRプログラムを導入したが、今年度からは新入社員同士のコミュニケーションを促すためメタバースに専用スペースを設けた。約450人の新入社員と指導員となる社員は班ごとに行う共同作業の場として使用するほか、研修時間外にも利用できるようにした。同社は「中堅社員やリーダー向けの研修などにも活用していきたい」(広報本部)という。

また、同社はメタバースを活用したネット通販の事業化も急ぐ。昨年12月に仮想空間に作ったショッピングモールで買い物ができるスマートフォンアプリ「メタパ」を開発した。現在、モールへの出店は2店舗にとどまるが、1日当たり200~300件のアクセスがあり、アプリのダウンロード数は1万件を超えている。今年度はアプリのダウンロード5万件、モールの出店数50店を目指す考え。

春華堂が開設した「五穀屋」ブランドの商品を扱うバーチャルストア(春華堂提供)
春華堂が開設した「五穀屋」ブランドの商品を扱うバーチャルストア(春華堂提供)

VR店舗を開設する動きも出てきた。浜松銘菓「うなぎパイ」で知られる菓子メーカー、春華堂(浜松市中区)は、コロナ禍の土産物不振の打開策として店内を体感しながら商品を購入できる「五穀屋 バーチャルストア」を3月に立ち上げた。五穀屋ブランドで展開するせんべいや発酵飲料など約20点を販売する。「より対面に近い通信販売で、顧客からの反響もいい」(広報担当)という。


仮想空間関連の市場は、技術や機器の進展もあって急速に拡大している。VRやメタバース以外にもゴーグルなどを介して、実際に見える空間に3D画像を重ねて建築物の説明などで利用する「拡張現実(AR)」もある。市場調査会社の富士キメラ総研によると、コロナ禍前の元年に180億円だったAR・VRの事業向けサービス市場は、今年度に2倍以上の376億円にまで拡大する見込み。12年には市場が8379億円に達すると予想している。(青山博美)

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