処理水放出計画は「適切」 福島第1 実質審査終了

処理水タンクが並ぶ東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)=2021年2月24日(本社ヘリから、川口良介撮影)
処理水タンクが並ぶ東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)=2021年2月24日(本社ヘリから、川口良介撮影)

東京電力福島第1原発の汚染水を浄化した処理水の海洋放出をめぐり、原子力規制委員会は15日、東電が必要な設備の設計や手順をまとめた実施計画の実質的な審査を終えた。一般からの意見公募を踏まえて認可され、福島県と立地自治体の事前了解が得られれば、放出に使う海底トンネル敷設など設備工事が本格化できる。ただ、漁業関係者らから十分な理解は得られていない。政府が来年春ごろの放出方針を決めて1年が過ぎる中、その実現には不透明感も漂っている。

「中身が不十分であるとか、適切に評価されていないものは残っていない。確認すべき事項は確認できた」。この日の審査会合では、東電側からの説明を聞き終えた規制庁幹部がこう述べ、「今日で一区切り」と議論を締めくくった。

今後、規制委は合格証にあたる「審査書案」をまとめ、1カ月程度の意見公募などを踏まえて正式に認可となる見通しだ。

昨年12月に東電が審査を申請して以降、審査会合では、放出に必要な設備の設計や手順などを論点ごとに議論。希釈した処理水の放出方法や自然災害への対策、海域モニタリングで異常値が確認された場合に放出を緊急停止する仕組みなど計画に問題がないかが確認された。

規制委は昨年度中に審査書案を示し、意見公募を始めたい考えだったが、進捗(しんちょく)が想定よりも遅れ、年度をまたぐ格好となった。工事の着手には、福島県と立地自治体である双葉、大熊両町の事前了解も必要となるため、認可後は同意を得られるかが焦点となる。

政府と東電は、処理水の貯蔵タンクが満杯になるとされる来年春ごろの放出開始を目指しており、6月にも本格的な工事に着手し、来年4月中旬に放出設備を完成させたい考えだ。今月12日には、東電が処理水の放出関連費用について令和6年度までの4カ年で計約430億円かかるとの見通しを明らかにするなど、計画は具体化しつつある。

一方、政府は「関係者の理解なしには、いかなる処分もしない」との姿勢を示し、風評被害を懸念する漁業関係者らへの説明を続けているが、現状では十分な理解を得られていない。

5日に岸田文雄首相と面会した全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長が「いささかも反対の立場に変わりはない」と述べるなど関係者の反発は依然として根強く、放出の実現には合意形成が課題となっている。

福島第1原発の処理水 原発事故や廃炉工程で生じた汚染水を、多核種除去設備(ALPS)でトリチウムを除く大半の放射性物質を浄化したもの。政府と東京電力の計画では、海水で100倍以上に希釈した上で、海底トンネルで沖合約1キロの海域に放出する。1リットル当たりに含まれるトリチウムの濃度は国の排出基準(6万ベクレル)の40分の1程度である1500ベクレル未満まで薄める。

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