「謙虚で丁寧」信条に…勇退後も第一線に立つ〝レジェンドSP〟

警視庁警備部警護課のSP山本敏夫氏=17日、東京都千代田区(春名中撮影)
警視庁警備部警護課のSP山本敏夫氏=17日、東京都千代田区(春名中撮影)

自らを盾にして首相や閣僚、外国元首などの要人を守るSP(セキュリティーポリス)。全国の警察で唯一SPと呼称される警視庁警護課員の中でも、約30年にわたり第一線で活躍する「SPのレジェンド」と呼ばれる人がいる。豊富な経験と警護対象者からの厚い信頼を得て退職後も再任用となってSPを続け、後輩の指導にも尽力している。(大渡美咲)

鋭い眼光と一糸乱れぬオールバックの髪形、黒系のスーツの胸元にはSPバッジが光る。警視庁警護課で約30年にわたりSPを務める山本敏夫さん(61)だ。60歳で定年を迎えたが再任用され、現在も要人の警護に当たる。SPで再任用され、指導官として残る人はこれまでもいるが、現役SPとして現場を続けるケースは初めてだという。

国の中枢が集まる東京を守る警視庁では、全国で唯一SPの専門部署がある。SPになるには柔剣道の有段者であることや高い射撃能力、語学力も必要だ。志望者も多く、警視庁の花形部署の一つだが、厳しい選考基準があるため、機動隊員などを経てから選ばれるケースが多い。山本さんは警察署勤務後にSPに抜擢(ばってき)された。

ただ、その勤務は過酷だ。時には自身が盾となって警護対象者を守らなければならない。「昼夜を問わず一日中、張り詰めた緊張感がある」と山本さん。警護対象者の日程に合わせて動くため、食事にも気を付けている。とくに選挙などで多くの人と触れ合う機会が多い場合はもっとも警戒を強める。

山本さんは毎朝、警護対象者と会う際に、目や顔色などを見て健康状態にも気を配るという。対象者との距離も臨機応変にする。豊富な経験に基づくが、「直近で仕事をしているからこそ信頼を得ることが重要。何よりも誠心誠意を持って警護に当たることが大切です」と話す。

後輩の男性巡査部長(37)は「山本さんがいるだけで現場が引き締まる。必ず的確に指導してくれる」と話す。

中曽根康弘元首相ら8人もの総理大臣に就いた。その間には政権交代もあった。拳銃や無線などの装備も以前よりは軽量化されたが、山本さんは「時代が変わってもSPの仕事は変わらない。『謙虚で丁寧に、現場では躊躇(ちゅうちょ)なく』を信条に、後輩に技術や思いを継承していきたい」と力を込めた。

警視庁SP(セキュリティーポリス) 警視庁警備部警護課に所属し、首相や閣僚、衆参両院議長、外国元首ら要人警護に専従で当たる。警視庁SPは昭和50年6月に当時の三木武夫首相が日本武道館で右翼に殴打された事件を受けて発足。それまでの警護担当は目立たないよう動く「陰の警護」だったが、米大統領警護隊(シークレットサービス)を参考に、周囲に存在感を示して襲撃などを抑止する「陽の警護」へ方針が転換された。

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