「何度も母親をやめたくなった」発達障害の育児奮戦記に思う

コラム「発達障害 子育てはデコボコ道」に掲載したかなしろにゃんこ。さんの書き下ろしマンガ
コラム「発達障害 子育てはデコボコ道」に掲載したかなしろにゃんこ。さんの書き下ろしマンガ

一人の読者として、子供の成長譚(たん)に深い感慨を覚えた。3月までの半年間、毎月第2、4火曜日の夕刊に掲載したコラム「発達障害 子育てはデコボコ道」。漫画家、かなしろにゃんこ。さんが、発達障害のある23歳の息子、リュウ太さんの育児を振り返った。

リュウ太さんは小学4年のとき、重度の注意欠陥・多動性障害(ADHD)で、自閉症スペクトラム障害(ASD)の特性も併せ持つと診断された。衝動を抑えがたい障害特性のため授業中に工作を始めたり、聴覚過敏による疲労やイライラから教室を飛び出したりしていた。

だが高学年になると、自席でジャージーを頭からかぶって落ち着けるようになり、こうした行動は減っていく。また極端に多い忘れ物を防ぐため、中学2年のときには時間割に合わせて準備するのではなく、全教科の教科書や問題集を常にカバンに詰め込むようになった。忘れ物をすることは、リュウ太さんにとっても精神的な負担になっていたという。障害特性に気づき、困りごとを解消するために工夫するこうした「自己支援」は、社会で生きやすくなるためにまず必要な手立てといえるだろう。

「人づきあい」の捉え方にも大きな変化があった。コミュニケーションが苦手で同級生とのトラブルが絶えず、中学生になっても気に入らない相手にはけんか腰。かなしろさんの一番の懸念は「社会での孤立」だった。ところが中学3年の頃から、「質問をして相手の話も聞く」というかなしろさんのアドバイスを実践。その方が自分も話していて楽しいと感じたという。就職先では、上司らとの親交が深まれば業務上の会話も円滑になり「自分にとってお得」と、飲み会にも参加するようなった。

リュウ太さんが自身で気づき、努力し、たどり着いた生き方だが、背景にはかなしろさんの奔走がある。同級生とのトラブルをめぐる謝罪。本人が特性と向き合うための告知。カミングアウト。アルバイト先のセッティング-。つらいできごとも多く、「何度も母親をやめたくなった」という。

障害特性や性格、生活環境は個々で異なり、コラムに登場した手立てが誰にでも有効とはかぎらない。対応を模索する保護者には、「本当にこれでいいのか」という不安が付きまとう。思い悩んだら抱え込まずに、地域の支援機関に相談してほしい。(藤井沙織)

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