浪速風

悪の凡庸さ

ユダヤ人大虐殺で中心的な役割を担ったアドルフ・アイヒマンを追及する裁判を取材した政治哲学者、ハンナ・アーレントは、そこに「悪の凡庸さ」をみた。アイヒマンはただ組織に従っただけだと主張。怪物、極悪人というよりも、むしろ凡庸な人物との印象をアーレントに与えたという

▶ウクライナに侵攻したロシア兵による残虐行為に国際社会は衝撃を受けている。これまで、彼らの士気は低く部隊を離脱する者も少なくない、といった指摘が多かったような気がする。ロシア兵といえども普通の人、極限の状況に適応できないのだろう、と小欄は解釈していた。が、まったく甘かった

▶暴虐の限りを尽くした兵士もいずれ、仕事と家族を持つ普通の人間に戻ろうとするのだろうか。いや、この先まともに生きてはいけまい。仮に裁きを逃れえたとしても、だ。ロシアの指導者たちは毎日、死者だけでなく、人間であることを捨てる者も増やしている。

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