男女平等世界一。そんな国ノルウェーの女性ジャーナリストが自分の立ち位置から問題点を探った報告書だ。この「先を行く国」もまだまだ課題を抱えていることに驚き、積年の疑問が解きほぐされる思いだった。
第一章は「『仕事と家庭の両立』という難問」。この万国共通の課題とも早くから向き合ってきた国だった。以下、70年代、80年代と女性をめぐる社会変革の動きをたどる。フェミニストたちはどう闘ってきたのか。
仕事と育児。ノルウェーの女性たちも日本と同じジレンマを抱えている。十分な年金を受け取るにはフルタイムで仕事を続けねばならない。日本では子供を一日10時間も預けたくない女性は時短勤務を選ぶが、年金も少なくなる。
「今の時代、子どもや病人、老人のケアや家事は仕事と見なされない。労働という言葉は、家庭外で行われる賃労働を指す」のも日本と同じ。主婦をめぐる賛否もリアルだ。妻に全面サポートされる男性と同等の働きを要求された女性は子供を抱えてどうすればいいのか。
福祉は市場の論理で片付けられるようなものではないのに理想的とはいいがたい保育環境の実態がある。市場経済に縛られ、男女とも疲れ切っている。男女ともアクティブに仕事をしながら育児の時間を確保できないものだろうか。
著者は「私は子どもを早くに保育所に預けたことを後悔する」と書いていた。私も昔、共働きでないと生活できず、預けたくはないのに子供を生後3カ月から共同保育所に預けた。老後のことも心配だったのは当然である。
過去に戻りたいのかと非難されずに男女平等のあり方や平等の優先順位を再検討することはできないだろうか、との著者の言葉に、ため息とともにうなずいた。
堺市北区 大山敏子(75)
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