「投資家が悪い」責任転嫁 SMBC日興相場操縦

SMBC日興証券をめぐる金融商品取引法違反(相場操縦)事件で、エクイティ部元部長の山田誠被告(44)=同法違反罪で起訴=が東京地検特捜部の調べに対し、株価を維持するため大量の買い注文を入れた理由について、「(株価を下落させた)投資家の方が悪い」などと供述していることが13日、関係者への取材で分かった。特捜部は、元副社長・執行役員の佐藤俊弘被告(59)=同=のもと、特殊な営業手法や順法精神に欠ける同社の姿勢が事件を招いたとみている。(荒船清太、吉原実、石原颯)

取引日を明示

10銘柄すべての相場操縦に関与し、事件を主導したとされる山田被告は「買い支える」といった内容を上司にメールで報告していたと認める一方、関係者によると「空売りをする投資家が悪い」などと供述。投資家に責任転嫁する趣旨の発言もしているという。

相場操縦の疑いが持たれている10銘柄では、同社が大量の買い注文を入れる前に、投資家から大量の空売り注文が入っていた。特捜部は、空売りで下落した株価を持ち直すため、山田被告らが市場が閉まる直前に大量の買い注文を出していたとみている。

だが、空売りは自然発生したわけではない。同社の営業担当部門は、大株主の株を証券会社が市場時間外に買い取った上で、投資家に転売する「ブロックオファー」取引について、投資家に特定銘柄の取引日を明示し株購入を打診。取引日が特定されているため、空売りを仕掛けやすい構図が出来上がっていた。

検察幹部は「業界他社は空売りを防止する仕組みを作っているのに、SMBC日興は助長している。捜査で同社の特異性が判明し、相場操縦の疑いが強いと判断できた」とする。

順法精神欠け

株価が下落しすぎると大株主がブロックオファーに応じなくなる一方、投資家は株価が下がるほど空売りで利益を得る―。大株主と投資家の双方が納得できる状況を作り出し、自社の利益にもつなげるため、山田被告らは株価を一定の範囲内に留めておく必要があった。

山田被告らが問われているのは、相場操縦罪の一つである「安定操作」だ。

通常の相場操縦が株価の上げ下げによって生じる「差益」を求めて行われるのに対し、安定操作は株価を一定の範囲内にくぎ付けする目的で行われる。

安定操作の実行者は一般に証券会社が想定されている。大量の新株が市場に流通し大幅な価格変動が予想される場合など一定の条件下で、なおかつ届け出をすると合法的に行える。ただ、原則は違法とされている行為で、検察幹部は「証券マンであれば、どのような行為が一線を越えるのか分かっていて当然だ」と指摘する。

特捜部は、同社が行ったブロックオファーではこのような条件が満たされていない上、市場が閉じる直前に大量の買い注文を入れているなど違法性が明白であると判断し、計10銘柄をめぐる取引について起訴したもようだ。

別の検察幹部は、「仕手筋が株価をつり上げるのとは悪質性が全く異なる。市場の『元締め』ともいえる証券会社の行為として問題外だ」と指摘した。

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