「忍び寄る権威主義が人権の脅威に」 米国務省報告書、露中を批判

ブリンケン国務長官(ロイター)
ブリンケン国務長官(ロイター)

【ワシントン=塩原永久】米国務省は12日、世界約200カ国・地域を対象にした2021年版の人権報告書を発表した。ロシアや中国などで深刻な人権侵害が続き、「忍び寄る権威主義が人権と民主主義を脅かしている」と警鐘を鳴らした。ブリンケン国務長官は「(人権保護が)国家安全保障に死活的に重要だ」と指摘し、侵害事実の把握や、制裁による対抗策に注力する姿勢を示した。

報告書は多数の国で人権がないがしろにされ、民主主義が一部地域で退潮していると危機感を表明。バイデン米政権は「人権を内政と外交の政策の中心に位置づけてきた」と述べ、人権を重視する姿勢を改めて強調した。

ロシアについては、「理不尽な」ウクライナ侵攻を批判した。2014年にロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島で、「人権状況が著しく悪化した」と指摘。ロシア国内でウクライナ人が政治的理由で拘束され、裁判にかけられた例が報告されているとした。

また、ロシアの反体制派指導者、ナワリヌイ氏への2020年の毒殺未遂事件に触れ、事件を実行したとされる露連邦保安局(FSB)が、関与した疑いがある不審死が複数あるとする民間機関などの調査を紹介した。

当局の選挙干渉や報道の自由の抑圧も問題視した。

中国については、新疆(しんきょう)ウイグル自治区の少数民族ウイグル族に対する「ジェノサイド(集団殺害)」を引き続き非難。強制収容施設が、学校や工場の跡地を利用して拡張されていると懸念を示した。

中国の女子テニス選手だった彭帥さんが、政府高官から性的関係を強要されたと告白した後、消息不明となった問題も取り上げた。

北朝鮮をめぐっては、深刻な人権侵害が多数あるとして、日本人などの外国人拉致問題を指摘した。

ブリンケン氏は記者会見で、権威主義国などの当局が国外で反体制派への攻撃を企てるようになり、「一段と恥知らずになった」と語った。反体制派ジャーナリストが搭乗した航空機をベラルーシが強制着陸させた例や、イラン系米国人記者の拉致をイラン情報機関関係者が米国で計画し、起訴されたケースを挙げた。

バイデン政権は、財務省の制裁や、人権侵害制裁法「マグニツキー法」を駆使し、対抗していく方針だ。ブリンケン氏は、対応の前提となる事実確認に向け、人権団体などの外部機関との協力を重視するとした。

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