公共劇場の「顔」、芸術監督とは? 著名人続々、多彩な役割

世田谷パブリックシアターの芸術監督は、野村萬斎氏(右)から白井晃氏に引き継がれた=3月14日(道丸摩耶撮影)
世田谷パブリックシアターの芸術監督は、野村萬斎氏(右)から白井晃氏に引き継がれた=3月14日(道丸摩耶撮影)

彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市中央区)、世田谷パブリックシアター(東京都世田谷区)などの公共劇場で今年度、新たな芸術監督が相次いで誕生した。芸術監督は劇場の〝顔〟ともいわれるが、一体どのような役割を果たしているのか。新旧監督らの話から見えてきたのは、日本ならではの「座長」スタイルに近い芸術監督の姿だ。

芸術面の責任者

劇場の芸術監督とは、その劇場で上演する演目の芸術面での責任者のこと。任期は劇場ごとに異なるが、数十年の長期にわたることもある。Bunkamuraシアターコクーン(渋谷区)とさいたま芸術劇場の芸術監督を務めた故蜷川(にながわ)幸雄氏や、平成21年から東京芸術劇場(豊島区)の芸術監督を務める野田秀樹氏(66)など、著名な演出家が就くことも多い。

オペラから現代演劇まで幅広く上演する新国立劇場(渋谷区)では、オペラ部門に指揮者の大野和士(かずし)氏(62)、舞踏部門にバレリーナの吉田都氏(56)、演劇部門に演出家の小川絵梨子氏(43)と3人の芸術監督が各分野を担当。上演作品の芸術的な「品質保証」を担う。

さいたま芸術劇場では、蜷川氏の死去を受け空席となっていた芸術監督に、4月からダンサーの近藤良平氏(53)が就任。世田谷パブリックシアターでは、20年にわたり芸術監督を務めていた狂言師の野村萬斎氏(56)に代わり4月から演出家の白井晃氏(64)が就任した。

「芸術監督は、劇場がどういう方向で表現する場であろうとするか、どういうものを文化として発信していけるのか、その旗印にならないといけない」

世田谷パブリックシアターで3月に開かれた芸術監督交代会見で、白井氏は自身がめざす芸術監督像をそう語った。白井氏は昨年3月まで神奈川芸術劇場(KAAT、横浜市中区)の芸術監督を務めており、演出家の長塚圭史氏(46)にバトンタッチしたばかり。「同じ公共劇場でも、KAATと世田谷は枠組みが違う。区の劇場であることの役割を見つめ直したい」と意気込む。

一方、さいたま芸術劇場の新監督、近藤氏は就任会見で「ダンスが専門なので、ダンスの力を利用して楽しい芸術文化を届けたい」と抱負を述べ、劇場のテーマに「クロッシング」(交差する)を掲げた。就任後、最初の演目となる「新世界」(29日開幕)ではシェークスピアの作品などをモチーフに、ダンス、サーカス、演劇、音楽と多彩なジャンルのアーティストがクロスして出演する。

英国型との違い

平成24年に施行された「劇場法」(劇場、音楽堂等の活性化に関する法律)では、公共劇場の活動強化はうたわれているものの、芸術監督については明文化されていない。

KAATの長塚氏は「芸術監督に決まった形があるわけではない。劇場ではさまざまなアーティストが作品を作るが、当事者の代表として劇場とはどうあるべきかを示していく役割。そこには人それぞれのカラーが出る」と話す。就任から1年たったが、芸術監督の役割については「まだ悩むところが多い」という。

14年に世田谷パブリックシアターの芸術監督となった野村氏は当初、予算や人事まで主導する英国の芸術監督の姿にあこがれたという。しかし、静岡県舞台芸術センターなど一部を除き、日本の公共劇場の芸術監督は、予算や人事に関わらない。野村氏は「演出もし、主演もし、劇場の顔になる。日本の演劇形態に即した座長的な芸術監督になっていった」と自身を振り返った。

芸術監督がいる公共劇場は珍しくないが、その役割は統一化されていないのが日本の現状といえる。白井氏は19日、小川氏、近藤氏、長塚氏を招いて公共劇場の芸術監督の役割を考えるイベントを開催。新たな芸術監督像を模索する。(道丸摩耶)

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