主張

IPCCの新目標 25年の成否は中国次第だ

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第3作業部会による「第6次報告書」が公表された。

二酸化炭素(CO2)に代表される温室効果ガス(GHG)の排出削減策と温暖化抑制効果についてまとめた内容だ。

報告書によると、世界のGHG排出量の増加率は低下傾向を示しているが、排出量そのものは今も右肩上がりが続いている。

こうした排出状況を踏まえて報告書は、気温上昇幅を産業革命前と比べて「1・5度」に抑えるためには、GHG排出量のピークを遅くても2025年以前に迎える必要があると指摘した。

この1・5度目標は昨秋、英国で開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で成立した全体合意だが、GHG排出量を3年以内に削減に転じさせるのは至難の業だ。

なぜなら、世界1位の排出国である中国は、30年まで排出を増やし続ける方針であるからだ。中国の排出は世界の約3分の1を占める量に達している。今回も中国の政策決定者がIPCCの報告書に耳を傾けて、削減の前倒しに転じる可能性は皆無だろう。

日本はこれまでIPCCの報告書とCOPの合意に愚直といえるほど律義に対応してきたが、そろそろ国益と地球益との両立を可能にする、巧みな国際交渉術を習得すべき時である。

京都議定書以来、温暖化問題は経済成長と表裏一体だったが、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー安全保障の要素が明確に加わったといえる。環境優等生を自任し、脱原発と脱石炭に、再生可能エネルギーとロシア産天然ガスを組み合わせた電力政策を計画していたドイツが目下、苦境に直面している現実がその一例だ。

日本は30年度のCO2などの排出量を13年度比で46%削減し、50年までに実質ゼロにすることを世界に向けて公約しているが、脱炭素電源の原発再稼働は10基に達したところで足踏みだ。

国際紛争の可能性は日本の周辺にもくすぶっている。原発をなおざりにした、再エネと天然ガス頼みのエネルギー戦略で、降りかかる国難を乗り切れるのか。

IPCCの3つの作業部会の報告書が8年ぶりに出そろった。地球温暖化問題の本質を冷静に再考する機会としたい。

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