「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

平田2軍監督の1軍昇格も…チームのムードを変えろ!

2軍の練習を視察する矢野燿大監督(右)と平田勝男2軍監督(撮影・榎本雅弘)
2軍の練習を視察する矢野燿大監督(右)と平田勝男2軍監督(撮影・榎本雅弘)

平田勝男2軍監督(62)の1軍昇格も浮上策の一手になるでしょう。開幕14試合で1勝12敗1分け、シーズン100敗ペースの矢野阪神ですが、「戦力がないから勝てない」ではなく、「戦力外の問題」で勝てない…というのがチーム周辺の一致した見解です。しかし、まだまだシーズンは残り129試合も残っています。阪神球団首脳は打開策を躊躇(ちゅうちょ)なく実行に移すことです。「戦力はある」のですから、最重要ポイントはチームの空気をガラリと換える打開策の断行ですね。指導体制にメスを入れる、大型トレード…。リスク覚悟の浮上策をうなだれるファンに今こそ見せてほしいものです。

■今年の戦力は十分にある

チームの成績表を見るとため息しか出てきません。最初で最大の逆襲ポイントとみていた本拠地・甲子園球場でのDeNA戦2試合(1試合はDeNAのコロナ禍で中止)と広島3連戦は1勝3敗1分け。悪夢の開幕9連敗の後、また3連敗で開幕14試合終了時点での成績は1勝12敗1分け。

これはパ・リーグの最下位、新庄剛志監督率いる日本ハムの3勝11敗よりも悪い! ある知人はこんなことを言いました。

「新庄ハムは〝遊び〟ながら、選手を育成しながらある意味、ムチャクチャな選手起用でも3勝11敗。阪神は矢野監督が真剣に取り組み、悩みながら戦い、優勝を目指す!と言って1勝12敗1分け…。どうせ負けるのなら、新庄ハムのように明るく、ムチャクチャな野球をやってくれた方が見る側も楽しい。阪神は暗くて、悲壮感が漂っていて、見ているのが辛くなる」

あくまでも無責任な外野の声ですが、なんだか〝なるほどなぁ~〟と思ってしまいました。ここでもう一度、あまり見たくもない数字ですが、チーム成績をおさらいすると…。

まず打撃陣のチーム打率2割3分はリーグ5位。9本塁打はリーグ4位。38得点はリーグワースト。3盗塁はリーグ最少。投手陣ではチーム防御率4・84はリーグワーストどころか、12球団で一番、悪い。73失点もリーグワーストどころか12球団最悪。つまり、打撃陣は打てない、長打力も乏しい、しかも昨季までのように機動力も使えていない。結果として点が獲れない。投手陣もボロボロ…。これでは勝てるわけがない。シーズン10勝ペースだとか、100敗ペースだとか、言われていますが、このまま低迷が続くならばシーズン終了後にはひどい数字が並ぶことになります。

しかし、まだまだシーズンは14試合を消化しただけなのです。先は長い。巻き返せるチャンスはいくらでもあるのです。(なんや、鬼筆の割には言うてることが甘いやないか!)と思った人も多いと思いますが、どうしてそう思うのか…といえば1985年(昭和60年)以降の阪神の浮沈を見てきた者として、これだけは言い切れるのは「今年のタイガースの戦力は十分にある」ということです。

かつて暗黒時代を彷徨(さまよ)っていた時代は、4番打者が見当たらず、他球団を戦力外になった選手に「4番目」の打者を務めさせていたこともありました。投手陣もエースと呼ばれている投手がシーズン10敗以上の黒星を背負い、抑え投手もいない。監督が可哀そうなぐらいの戦力しかなかった時代を目のあたりにしました。1999年(平成11年)から3シーズン、最下位に沈んだ野村克也監督は「中心軸のない組織は機能しない」と嘆き、当時の久万俊二郎オーナーに「エースと4番は育てることはできない。ドラフトや補強でエースと4番を獲って欲しい」と訴えていました。

その頃と比べてみると、今季のタイガースはどうでしょう。打線では1番に近本、4番に佐藤輝がいますね。投手陣も青柳がコロナ感染で出遅れたものの、西勇輝、伊藤将、ガンケルや藤浪、秋山。リリーフでは岩崎、湯浅、小川、桐敷など駒は豊富です。他球団との比較で見ても、全く遜色はありません。確かに外国人選手の力量不足や故障で打線には昨季のような破壊力はありませんが、それでも打撃成績の8位に大山、9位に近本、13位に佐藤輝が入っています。戦略戦術を駆使すればここまで敗戦が続く戦力ではないはずです。

■負のスパイラルから転換を

ただ、現実は勝てない日々です。負のスパイラル(螺旋)に陥っているチームをどうやって転換させるのか。ここは、コラムで何度も書いてきた通り、現場の矢野監督ら首脳陣に頼るだけではなく、球団フロントが機敏に打開策を実行に移すことです。戦力はあるのに、これだけ負ける…ということは、戦力以外の問題でチームは負のスパイラルに陥ったと考えるべきでしょう。シーズン開幕14試合しか消化していない段階で打てる手は少ないでしょうが、指導体制に重大な問題があると見るのならば、矢野燿大監督(53)の解任も含めた刷新も躊躇なく断行すべきです。コーチ陣の1・2軍の入れ替えもあり得る選択肢でしょうね。

あくまでもひとつのプランですが、明るいキャラクターでコメントを聞くだけでも楽しくなる、平田勝男2軍監督(62)を監督代行かヘッドコーチ格で1軍ベンチに昇格させるのも改革案の一手でしょう。ベンチのムードは180度、変わりますよ。激変するでしょう。

指導体制にメスを入れることだけではなく、場合によっては主力級選手の大型トレードも考えるべきかもしれません。ここ数年、阪神はシーズン途中の交換トレードを何件か成立させていますね。昨季はソフトバンクとの間で二保旭投手と中谷将大外野手の交換トレードを成立させています。それ以前にもオリックスの間で小林慶祐投手と飯田優也投手の交換トレードも成立させています。しかし、こんな表現は不適切かもしれませんが、枝葉の選手の交換ではなく、チームに刺激を与え、しかも戦う〝陣形〟まで変えるような主力選手同士の交換トレードを考えてみるのもアリではないでしょうか。

■球団首脳に問われる「力仕事」

とにかく、阪神球団は現状を放置していては絶対にダメですね。「監督を信じています。信頼していますから」というセリフは、全ての責任を監督だけに押し付け、球団フロントは〝傍観〟しているだけ…という暗黒時代の球団首脳と同じスタンスでしかありませんね。負け続けても、現場を〝放置〟し、時が過ぎ去るのをただひたすら待つ。そして、惨敗の責任を全部、現場の監督や指導者に覆いかぶせて、さあ来季こそ〇〇年ぶりの優勝や!…というのは、もう通用しませんよ。前代未聞の敗走を続けるチームを立て直し、逆襲に転じるには相当な力仕事が必要ですが、球団社長や球団本部の幹部たちはリスク覚悟の打開策を今こそ断行しなければなりません。

戦力はある! のです。戦力が枯渇し、監督が打つ手すらなかった暗黒時代とは違うチームのはずです。チームの空気を換え、選手達が自分達の役割を自覚し、目の前のプレーに全力を傾けることが続けられるようになれば、きっと急浮上のチャンスはやって来るでしょう。今は静観ではなく、動かなければなりません。それほど現状は切羽詰まっていますね。

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。

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