北川信行の蹴球ノート

セレッソ桜「満開」…チーム内の競争が生む好循環

練習を見守るセレッソ大阪の小菊監督(セレッソ大阪提供)
練習を見守るセレッソ大阪の小菊監督(セレッソ大阪提供)

サッカーJ1のセレッソ大阪が覚醒したかのような強さを見せている。J1リーグ戦では、4月2日に別格の強さを誇ってきた川崎フロンターレにアウェーで4-1と大勝。失点が続いていた守備陣も10日のアウェー、ヴィッセル神戸戦で初のクリーンシートを達成した。YBCルヴァン・カップでも大分トリニータを6-1で退けるなど3戦全勝。13日にホームのヨドコウ桜スタジアムで行われる鹿島アントラーズ戦に勝てば、2試合を残し、早々と1次リーグ突破が決まる。まさに「満開」を迎えた感のあるセレッソ桜。どこまで咲き誇れるか、注目される。

新戦力が次々台頭

鹿島戦に向け、12日に行われたオンラインでの囲み会見。2季目の指揮を執る小菊昭雄監督はチームが好調な要因をこう表現した。

「チーム全体がすごい競争をしている。(練習場所のある)舞洲からバチバチやれている」

つまり、チーム内での競争意識の高まりが、いい練習、いい準備につながり、好結果に結びついているという考え。練習での激しい競争を勝ち抜いた選手がルヴァン・カップで出場機会をもらい、そこで活躍することでリーグ戦で起用されていく好循環が生まれている。

中でも、「それぞれのポジションで争うことで勝者のメンタルを植え付ける」(梶野智チーム統括部長)との狙いで補強した選手たちの活躍が著しい。たとえば、J2のモンテディオ山形から加入したMF中原輝はルヴァン・カップの「大阪ダービー」で活躍し、坂元達裕(オーステンデ)の抜けた右MFの定位置を確保。リーグ戦では第2節以降先発出場を続けている。J1浦和レッズから移籍した左サイドバックの山中亮輔は第4節以降先発の座を勝ち取り、神戸戦では質の高いクロスでFW加藤陸次樹の決勝ゴールをアシスト。育成型期限付き移籍から復帰した舩木翔もルヴァン・カップで出場を重ね、貴重な左利きのDFとしてリーグ戦でも起用されるようになった。

このほか、J2ファジアーノ岡山から加入のFW上門知樹、徳島ヴォルティスから加わったMF鈴木徳真、V・ファーレン長崎から移籍の毎熊晟矢らも出場機会を与えられている。

17歳北野が刺激与える

こうした新戦力の中でも特にチームを活性化させているのが、育成年代からトップ昇格した17歳のFW北野颯太と2年ぶりに復帰したクロアチア人DFのマテイ・ヨニッチだ。

北野は3月2日のルヴァン・カップ鹿島戦で豪快な初ゴールを決めて一気に注目を浴びる存在に。リーグ戦ではまだ無得点だが、果敢にゴールを狙う以外にも、豊富な運動量で前線からの守備に貢献するなどし、FWの熾烈(しれつ)な定位置争いに割って入っている。今は上門や2年ぶりに復帰したブラジル人のブルーノメンデスとともに試合途中から投入される形が多いが、ブレークを予感させるプレーを続けている。

北野の台頭で刺激を受けた24歳の加藤や、22歳の山田寛人らも成長。川崎戦では山田が2ゴールを決め、加藤も神戸戦で今季初ゴールを挙げた。神戸戦後、加藤のプレーを「(メンバーから外れる)苦しい時期もあったが、もう一度初心に戻り、ゴールを奪うだけでなく、チームの勝利のためにハードワークしてくれた」と評した小菊監督は「ハードワークを続け、得点やアシストも増えれば、日本代表に入ってもおかしくない」と潜在能力の高さに太鼓判を押す。昨季まで大久保嘉人がつけていた背番号「20」を引き継いだ加藤も「日本代表は一番の目標。そこを目指してやり続けたい」と意欲を示した。

一方、ヨニッチは瀬古歩夢(グラスホッパー)の穴を埋めるべく、シーズン開幕直前に復帰が決定。新型コロナウイルス禍で合流が遅れ、3月26日のルヴァン・カップ大分戦で途中出場したのが復帰初戦だったが、その後はリーグ戦でフル出場。昨年に日本代表候補に初招集されるなど進化を続け、今季は20歳の若さで副主将となったDF西尾隆矢とコンビ組むセンターバック(CB)の安定感が飛躍的に増した。

以下に今季の公式戦での先発2トップと2CBの組み合わせを記してみる。

◆2月19日 J1 A △2-2 横浜M

FW=加藤、ブルーノ CB=西尾、進藤

◆2月23日 JC A 〇3-2 G大阪

FW=北野、上門 CB=鳥海、舩木

◆2月26日 J1 H △1-1 京都

FW=加藤、清武 CB=鳥海、西尾

◆3月2日 JC A 〇1-0 鹿島

FW=北野、上門 CB=西尾、舩木

◆3月6日 J1 H ●0-1 FC東京

FW=加藤、北野 CB=西尾、鳥海

◆3月12日 J1 A 〇3-1 清水

FW=山田、清武 CB=西尾、鳥海

◆3月19日 J1 H △2-2 札幌

FW=山田、ブルーノ CB=西尾、進藤

◆3月26日 JC H 〇6-1 大分

FW=北野、上門 CB=鳥海、舩木

◆4月2日 J1 A 〇4-1 川崎

FW=加藤、山田 CB=西尾、ヨニッチ

◆4月5日 J1 H ●0-1 柏

FW=加藤、山田 CB=西尾、ヨニッチ

◆4月10日 J1 A 〇1-0 神戸

FW=加藤、山田 CB=西尾、ヨニッチ

※J1はJ1リーグ戦、JCはYBCルヴァン・カップ、Hはホーム、Aはアウェー

デザインの共有進む

黒星を喫したFC東京戦と柏レイソル戦はともに、前半20分台に先制点を与え、その後の反攻が単調になった結果。しかし、神戸戦では前半はハイプレスからボールを奪って崩す攻撃、相手の反攻が予想された後半はプレスをかける位置を下げ、あえて引き込んでカウンターを狙う攻撃と使い分けができた。小菊監督は「いい守備からいい攻撃に移り、ゴールに襲いかかる。ファイナルゾーンでのゴールの奪い方が共有できている。キャンプからいろんな引き出しを練習してきた。使い分けてゴールに向かうのが大切」とした上で「1試合1試合共有できる時間が増えている。攻守のデザインの共有、誰が出ても役割をまっとうするということが、一つずつ浸透していっていると思う」と手応えを口にした。

カタにはまれば手を付けられない攻撃力。安定感を増した守備。J1リーグ戦では6位につけるセレッソ大阪だが、勢いを維持できれば、さらに上位をうかがえるだけの力がある。

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