京都大病院は12日、肺移植が必要な10代の女性患者に対し、血液型が適合していない親から肺の一部を移植する手術を実施したと発表した。血液型が不適合の生体移植手術は、肝臓や腎臓では実施されているが、肺については世界で初めて。患者は11日に退院し、経過は良好という。
患者と臓器提供者(ドナー)との血液型の組み合わせによっては移植後、拒絶反応で臓器が機能しなくなる懸念があり、特に肺は拒絶反応が起こりやすく感染症のリスクも高いことがネックだった。一方で、通常肺移植は2人のドナーを必要とするため、血液型不適合の場合でも生体移植が可能となることで、治療の選択肢が広がる。
病院によると、患者は関東地方在住で、幼少期の白血病に伴う骨髄移植などの合併症で、約3年前に「閉塞(へいそく)性細気管支炎」を発症。昨年9月から人工呼吸器を必要とする状態で、肺移植以外に救命方法はなく、40代の両親からの生体肺移植を決めた。母親は患者と同じO型だったが、父親はB型のため、患者には事前に免疫抑制剤を投与。さらに血中のB型への抗体を取り除く措置もした。
2月中旬、両親から摘出した肺の一部を移植。患者には不適合に伴う拒絶反応が1回起きたが、人工呼吸器を外して歩けるまでに回復、両親も社会復帰した。
国内では脳死ドナー不足により、肺移植の約3割は配偶者や家族らとの生体移植が占める。ただ、血液型が適合する家族が見つからないケースもあり、移植手術までに数年待ちの状態が続いている。
執刀した伊達洋至(ひろし)教授(呼吸器外科)は「これまでは脳死ドナーが少なかったり、適合する家族が2人いなかったりして多くの方が移植を待ちながら亡くなった。今回の成功は、こうした患者も救命できる新しい光になる」と話した。